ムソウノカキオキ

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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想~究極の掟破りに戦慄せよ!~

 現在10話まで放送中のスーパー戦隊宇宙戦隊キュウレンジャー』。
 9人組ヒーローからのスタートということで話題を集めましたが、実際始まってみるとそうしたキャッチーな部分とは別の所で行われる挑戦、そしてこれらの挑戦を凄まじくスマートな手口で行っていることに気が付きました。
 はい、つまり今回は「キュウレンジャーやばいよ!」と言うお話です。

 

・注:今回は、過去の『スーパー戦隊シリーズ』を踏まえたかなりマニアックな内容になっています。そうした話題が好みでない方にはお勧めできないかもしれません。

 

 


・おさらい:『宇宙戦隊キュウレンジャー』あらすじ
 邪悪な『宇宙幕府ジャークマター』に抗う宇宙戦隊キュウレンジャーは、9人の仲間を集結させる旅を続けていた。
 第5話にて9人揃い踏みを果たしたキュウレンジャーは今まで苦戦していた敵のカロー(大幹部)、エリードロンを撃破。
 エリードロンを倒されたジャークマターは第6話でキュウレンジャーに2人の刺客を送る。
 その刺客の片方マーダッコは9話で新戦士リュウコマンダーに敗北を喫する。
 10話ではコグマスカイブルーも加わり、キュウレンジャーは伝説を超えた11人となってジャークマターと戦い続ける。


・掟破りのキモは、”人物配置”
 以上が『キュウレンジャー』のあらすじです。
 9人戦隊が11人になるという部分に目を奪われがちですが、10話までで登場人物が入れ代わりがとてもスピーディーであることもお分かりいただけると思います。
 このスピーディーな展開を実現させたのは脚本の面白さもありますが、同時に設定段階でキャラクターの立ち位置=人物配置が良く練られているからだと思います。
 ここからは、『宇宙戦隊キュウレンジャー』の人物配置を中心に、その”ヤバさ”を見ていきましょう!

・人物配置:『宇宙幕府ジャークマター』編
 宇宙を支配する『宇宙幕府ジャークマター』。
 この組織は上から以下のような序列に分かれています。
 1.ショーグン(大首領)
 2.カロー(大幹部)
 3.ダイカーン(怪人)
 4.ツヨインダベー(上級戦闘員)
 5,インダベー(戦闘員)
 カッコ内は、特撮ヒーローのお約束に当てはめたモノです。

 さて、特撮ヒーローに対するイメージとして序列と出番の多さは対応しているというイメージは無いでしょうか?
 たとえば、怪人は1,2話程度でやられるけれど大幹部ならどれだけ短くても10話は出続けるだろう、と。
 実際、前年度の『動物戦隊ジュウオウジャー』の敵幹部はその多くが終盤まで生き延びるという構成でした。
 しかし、『キュウレンジャー』では、こうしたイメージをガン無視しています。(いや、過去の特撮ヒーローが全てイメージ通りというばかりではありませんが)
 あらすじで述べた通り、大幹部であるエリードロンは第1話から第5話までしか登場していません。
 その後、”刺客”という上記の序列には属さない(強いて言えば大幹部=カロー相当?)刺客が登場しています。
 このように、大幹部であろうとも短期間で容赦なく退場させられ、『キュウレンジャー』という作品に例年にはないスピード感を生んでいるわけです。
 こうした幹部クラスの短期間入れ替わりを実現するキモとなるのは、上級戦闘員ツヨインダベーの存在であると、僕は睨んでいます。
 と、言うのも、制作現場の都合を考えると毎回怪人の着ぐるみを作りつつ、新しい大幹部の着ぐるみまで作るというのはとても大変なことだと思われます。
 そして、ツヨインダベーには、ダイカーン(怪人)に成り上がれるという設定があります。
 つまり、新しい大幹部の着ぐるみを作っている時期にツヨインダベーの着ぐるみを(最小限の改造で)怪人として登場させれば、毎回怪人を出すという特撮ヒーローのお約束を実現することができます。(ちなみに、こうした試みは戦隊シリーズでは初のハズ)
 ともすると物語的には『ジャークマター』が弱く見える危険性も孕んでいるようにも見えます。

 しかし、実際の放送では大幹部が一人倒されても組織の屋台骨は崩れないと描写され、むしろ『宇宙幕府ジャークマター』の強大さが強調される形になっています。
 特定のアジトのセットも無いのですが、これは既に宇宙を支配しているジャークマターには特定のアジトを敢えて用意する必要はない、とこれまたスケールの大きさを強調しています。
 『ジャークマター』に関する諸々の設定は、設定上の序列と物語上の出番の過多を敢えて見直すことで従来の特撮ヒーローのお約束からは予想できない展開を生み出していると言えましょう。


・人物配置:『宇宙戦隊キュウレンジャー』編
 さて、『ジャークマター』以上に様々なトラップ……もとい仕掛けが用意されているのがヒーロー『キュウレンジャー』サイド。
 着ぐるみキャラと人間型で構成される登場人物を見渡すと驚かされるのが、変身しないキャラクターが一人もいないという点です。
 戦隊シリーズでは博士などのヒーローを公私で支える”変身しない”登場人物が基本一人以上はいるのがお約束でした。
 前作『ジュウオウジャー』でいえば戦隊の居候している家主、真理夫おじさんですね。
 しかし、本作ではヒーローを支える司令官やサポートロボットも変身して戦います。
 そして、毎回メンバーの内ランダムに決定される(とされる)何人かが出撃、他のメンバーはサポートにあたります。
 ええ、変身ヒーローであっても、です。
 これがどれだけとんでもないことなのかというと、戦隊なのに戦闘シーンで2人しか活躍しない回(第10話)が普通に存在すると言えば伝わるでしょうか。
 今のところは無いものの、今後は作品の顔役というべきレッドが1回も変身しない回だってあり得るでしょう。
 このランダム出撃システム、存外すんなりと視聴者に受け入れられました。
 この背景には「スーパー戦隊は5人が基本なのに、9人はやっぱ多いよね」という思いがあったのだと思います。
 しかし、全員が変身しないという状態が常態化した戦隊というのはやはり初です。
 過去の戦隊シリーズにも、メンバーの内1,2人が変身しない回と言うのは存在しましたが、やはり異例な出来事でした。
 それを、9人という大所帯を逆手に取ることで視聴者に受け入れさせてしまったのですね。この設定考えた人たち、本当に策士です。
 そも、従来の特撮ヒーローと比べた場合、『キュウレンジャー』の人物配置はオーソドックスです。
 戦闘要員をはじめ、司令官、サポートロボット、戦隊の弟分のような子供がいる、と。
 唯一ぶっ飛んでる点は、その全員が変身するという点です。
 この点でも、変身する者しない者という”序列”の見直しがされていると言えましょう。
 着ぐるみキャラなど、一見してヒーローにならないようなキャラクターであっても主役になりえることが当たり前なのが『キュウレンジャー』なのです。


・最後に
 いかがでしたでしょうか。
 『キュウレンジャー』という作品が、9人ヒーローというキャッチーな点を隠れ蓑にして、特撮ヒーローものの掟破りへ果敢に挑戦していることがお分かりいただけたかと思います。
 そして、真に恐るべきはこれらの掟破りに視聴者の反発がほとんど起きていない点。
 掟破りをスマートに成し遂げるスタッフ陣のテクニックもさることながら、長い歴史の中で様々な要素を受け入れる懐の広さを持つ『スーパー戦隊シリーズ』の奥深ささえ感じます。