そんなワケで屍山血河舞台下総国 英霊剣豪七番勝負、クリアいたしました。
いやぁ、今回も戦闘が大変だった(笑)
そんな下総国での冒険の感想を語り倒して行こうかと思います。
最初のご注意として、此処から先はガッツリネタバレが入ります。(一応、真名とかはボカしていくつもりですが)
未プレイの方はくれぐれもご覧になることのないようお願い申し上げます。
・ようこそ、NIHONへ!
1639年の日本という、ある意味僕達にとって非常に身近な舞台を持ってきた今回。
しかし、そこは人間離れした剣豪やロボニンジャが跋扈する、血湧き肉躍る心躍る、とんでもない世界でした。
いやまぁ、武蔵ちゃんや段蔵さんは例外としても、普通のお侍様がエネミーとある程度やりあえていると言うのは、冷静に考えるとナニカがおかしい。
後にある事情が明かされるわけですが、上記の事柄に関してはこちらの世界の小太郎くんが納得していることから、こちら=fate世界の日本も大体こんな感じであることが伺えます。
とはいえ、よくよく考えてみれば魔術やら、生前からトンデモスキル・出自を持った英霊やらが実在していた(らしい)fate世界なのですから、僕達の知る歴史とは異なる世界であることは当然と言えましょう。
第1部序盤は、僕らの知る歴史の延長線上なのかなーと言う肌触りでスタートした『fate/grand order』ですが、ココに来て『fate世界』と言う我々とは異なる世界を舞台にしていることをハッキリ示してきたと言えます。
付け加えれば、『fate世界』の日本と明示したことでエンタメ性たっぷりなストーリーをやれた感はあります。
・”二次”創作としての『英霊剣豪七番勝負』
fateの時代劇ということでおそらくは意図的に小説『魔界転生』の香りがつけられたと話題の今回。
もともと漫画版『魔界転生』に着想を得たと言われる『fate』シリーズが『魔界転生』をやるというなかなか訳のわからないけど面白いことになっているわけですな。
僕は『魔界転生』を未読なので、この辺りはええ、多くは語りません。
むしろ個人的には、第1部第1章オルレアンの二次創作=セルフパロディ的な導入になっていると感じました。
キャスターを側近とする黒幕に呼び出された、本来のあり方を曲げられた英霊7騎。しかも黒幕はあるサーヴァントのオルタとも言うべき人物(エミヤオルタ的な意味で)。まさにオルレアン。”清姫”が良い立ち位置にいますしね。
共通する構造を持ちながら、ある程度万人受けするラインでやっていたオルレアンに対して、今だからこそできる残酷描写や業の深いキャラクター達と言った部分を強く押し出した七番勝負……と読み比べるのも面白いでしょう。
ってか、『新宿』でアルトリア・オルタとジャンヌ・オルタと言う第1部序盤で活躍したキャラクターを出したり、と第1.5部は第1部序盤のセルフパロディを意図的にやっている部分があると思うのですがどうでしょうか?
・第1.5部の『転』にあたるパートとして
先述した本来のあり方を曲げられた英霊、という要素は1.5部であからさまなまでに繰り返し行われていることに気付かされますね。
そして、『サタン』なる存在の影が見えはじめ……。
この『亜種特異点Ⅲ 英霊剣豪七番勝負』は、物語の起承転結で言えば、『転』にあたると言えましょう。
これは『亜種特異点Ⅳ』がどう転ぶのか、ますます持って見えなくなりました。
・イベントシナリオに仕込まれた伏線がズルい!
多分誰も何も言わないでしょうから---つまり些細な事なのですが---本シナリオ公開前までに公開されたイベントシナリオや復刻シナリオに、多かれ少なかれ今回に向けての伏線(ネタ)を仕込んでいたというのは本当にズルいなぁと思います。
武蔵体験クエストが今回の序章になっていることや『監獄島』イベントが今回につながっていることは敢えて言うまでも無いですし、その後『鬼ヶ島』クエストの復刻は今回活躍するサーヴァントの紹介編となっている。
さらに、今年の水着イベントで、さり気なく『ライダーとして召喚された場合のパターン』に触れている、と。
もう、こんなギャグ時空(ところ)に伏線張ってくれるなよと!
『FGO』がスマホゲームと言うリアルタイム性の強いコンテンツを十全に活かしているのは以前指摘した通りですが、こういう形でネタを仕込んでくるとは思いませんでした。
まさか、その内『ぐだぐだ明治維新』やら『オール・ザ・ステイツメン』やらも伏線になる日が来るんじゃ無いでしょうか。
・イベントCG(?)の使い方が綺麗!
基本無料のゲームでありながら、今回は随分と一枚絵が多かった印象の今回。(ひょっとして描き下ろされた絵は過去最多でしょうか……?)
武蔵ちゃんの絵も捨てがたいですが、個人的には段蔵さんのモノローグに出てきた2枚の手がお気に入り。
登場人物の感情が最高に高まるタイミングで絵が入るんですよね。
この辺りのタイミングの妙は、さすが原作者さん達がノベルゲームの名作を生み出した方々だとしみじみ思いました。
・多数のキャラクターの捌き方が見事!
今回はまず、敵が英霊剣豪七騎という時点で人数が多い。
それに加えて英雄側の主人公というべき新免武蔵=武蔵ちゃん、マスターの相棒役のサーヴァント・風魔小太郎、彼らの協力者達、加えて下総の人々……と人がいるいる。
そんな中、各キャラクターにしっかり見せ場が用意されているのが嬉しいですね。
「コイツ誰だっけ?」と言うのが1人もいない。
ごく普通の姉妹として癒やしキャラだったおぬいちゃんと田助くん(何かあると思いましたがソレは深読みしすぎでした)、忍としてサーヴァントとして為すべきをなした小太郎、そして最後の最後の為のジョーカーに徹したお爺ちゃん。
特殊な理由をつけて、サブキャラにサーヴァントを”キャスティング”できるようにしたのもプラスに働いたんじゃないかと。立ち位置を説明すれば、あとは多くの説明を省くことができる。だって、マスター達は彼ら彼女らのことをよく知っていますもの。
・堕とされた英雄、英霊剣豪
『宿業』に従い、非道な行いを繰り返す英霊剣豪たち。
その行いはどうしようもなく悪なのですが、もともとは『宿業』によって歪められ、負の側面が増幅された英雄たち。
『宿業』によって露わにされたのは残虐性だけでなくそれぞれの弱さでもあったというのが英霊剣豪達の魅力に深みを与えているように感じます。(ウチのカルデアにいるパライソさんはアレへの恐怖なんておくびにも出しませんし)
もしも金時がいてくれれば……と死に際に嘆くライダー・黒縄地獄。確かに金時がいればあそこまでの被害が出る前に黒縄地獄は倒せたかもしれない。けれども、黒縄地獄と”彼女”が触れ合うことは無かったでしょう。
それを思うと、英霊剣豪のどうしようもない非道さを理解しながらも、どうしようもなく胸に来るものがあるのです。
……それにしても、キャスター・リンボとは、現代人にとってはリンボーダンスしか連想しないパワーワードですな(笑)
・武蔵ちゃんについて
英雄側の主人公とも
彼女の生き方を、危うさも含めて深く描かれたように感じます。
そも、世の中人のためとか、天下を取るとか、そうした公的な目的もなく、ただただ自分のために生きるか死ぬかの剣の道を極めんとする姿勢からして、現代人の僕からすれば危なっかしく感じられます。
武蔵自身、そんな自分の危うさを薄々分かっていたからこそ、時に迷い、そして最後に自身を「人でなしの部類」とまで自嘲したんじゃないかと思います。
そんな彼女にとって、カルデアのマスターがジミニー・クリケットの役割を果たしていた、と言うのはなんとも尊い。いや、尊いなんて一言で片付けちゃいけないんでしょうが。
・男武蔵について
物語にどう絡んでくるのかハラハラしていた男の武蔵。
個人的には、彼は本来の歴史(並行世界かもですが)の宮本武蔵だったのかなーと思います。
だとしたら、帰るべき世界・歴史を失った武蔵ちゃんと本来歴史には名を残さなかった長刀の剣士。
たとえ名は残らなかったとしても、本来の歴史・人理の中に確かに痕を残したのだなぁと思います。
・終わりに
はてさて、色々語りたいところではありますが、うん、実際にプレイされた方々は言うまでもなくもう得難いものを得ていることでしょう。
もし万一未プレイでここまで読んでしまった方は是非ともプレイしていただきたい……と語る所に留めておくのが丁度よい様に思えます。
兎にも角にも、英霊剣豪七番勝負、これにて閉幕。
物語は『亜種特異点Ⅳ 異端なるセイレム』に続く……。