変身するスーパーヒーローというものは、その多くが変身すると名前も全く変わるものです。
視聴者としてはすっかり『そういうもの』として受け入れられている感がありますが、振り返ってみると作品によってさまざまな付き合い方をしていることがわかります。
そこで、今回は変身ヒーローと名前の関係を作品ごとに観ていきたいと思います。
・そもそもなぜヒーローの名前は『変身』するのか
これは誰かがガイドラインを決めたことでもないので(ですよね?)、ハッキリしたことは言えませんが……
おそらく、もともと『変身』が人間としての正体を隠すためのものだったためと思われます。
古くは怪傑ゾロしかり、黄金バットしかり。
スーパーマンやバットマンの正体だって、秘密とされています。(少なくとも、作品世界においては)
『変身』によって姿を変えて、名前も変えることで正体を隠し、本当の姿を知られることなく活躍する。
しかし、ヒーローの在り方が多様化する中で、正体を隠さないヒーローも増えてきました。
その結果、『変身すれば名前も変わる』という様式美が昔の名残として残っているのかもしれません。
・ウルトラマン編
初代ウルトラマンの導入を見ると、なぜウルトラマンが二つの名前を持つのかわかりやすいです。
宇宙を守るウルトラマンは、任務中に地球人のハヤタ隊員を誤って死なせてしまう。
ハヤタの命を救うためにウルトラマンは彼と一体化。地球を守るために戦うのであった……といった感じ。
つまり、ウルトラマンとハヤタ隊員は全くの別人格であるわけです。
この奇妙な関係性は劇中で必ずしも強調されていたワケではありませんが、シリーズを重ねるにつれてこうした関係はシリーズの個性として扱われるようになりました。
たとえば、近年の『ウルトラマンタイガ』では主人公の青年と、一体化しているウルトラマン達がともに支えあい、成長するバディものとしての要素がありました。
一方で、ウルトラマンがあまり自己主張をしない作品であっても、変身する力をくれた何か大きな存在として、変身する人間とは少し離れた存在として扱われていたように感じます。
初代ウルトラマン以外にも、『ウルトラセブン』のようにウルトラマンが人間の姿に変装しているというパターンもあります。
こちらはオーソドックスな正体隠しに近いですが、人間としての名前の方が偽名であり、変身後のウルトラマンの方がむしろ素顔である、というのがほかのヒーローものとは一線を画するところです。
・仮面ライダー(昭和)編
最初のライダー、仮面ライダー1号はオーソドックスな正体隠しのヒーローと言えます。
彼はごく一部の人々を除いて、自分が仮面ライダーであることを隠しています。
ただ、ライダーの特徴は敵に対して正体が丸分かりなところ。
1号ライダーはそもそも、本郷青年が敵であるショッカーによって改造された存在。
つまり、ショッカーは最初からライダーの正体をよくよく知っているワケです。
バットマンやスーパーマンなどのアメコミヒーローが何で正体を隠しているかと言えば、その理由の一つは敵に正体がバレないため。
しかし、ライダーが正体を隠す相手は、敵ではなく身の回りの人々。
人間の姿で正体を隠している間だけは、本郷青年は自分が仮面ライダー=怪人たちと同じ異形の超人であることを忘れられる……というわけです。
敵には正体が知られていて、味方には正体を隠さなくてはならない。
この陰のある設定が、原作者の石ノ森章太郎先生の味なのかもしれません。
まぁ、シリーズを重ねていくとそんなに正体を隠さない人とか、なんで正体を隠しているのかよくわからない人とかも出てくるのはご愛敬(笑)。
ともあれ、初代のウルトラマンと仮面ライダーという二大ヒーローが打ち出したのは、『ひとたび変身すれば無敵の超人、変身前はごく普通の若者』であるという格好良さ。ヒーローとはこういうものであると言うフォーマットであるとも言えます。
もっとも、時代を経るにつれてそのフォーマットは多少の変化を迎えるわけですが……
ちょっと長くなりそうなので今回はここまで。
次回は、戦隊ヒーローと平成以降の仮面ライダーについて見ていきたいと思います。
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