ムソウノカキオキ

管理人の好きなこと(アニメ、特撮、オモチャetc)についてつらつらと語っていくブログです。色々遅いですが、よろしければコメントなどもお気軽にどうぞ

デレステイベントコミュ『オウムアムアに幸運を』感想

 アプリゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』のイベント『Live Carnival』コミュ(ストーリー)が実に良かったので簡単に感想を書かせていただきます。
 楽曲や関連映像は動画サイトで視聴できるので、それだけでも未プレイの方はご覧いただければ……!

(以下、ネタバレがっつり行きまーす)

 

・『Spin off』と言う独特な立ち位置の作品

www.youtube.com


 まずはこちら↑のイカした映像を観ていただきたい。
 この『Spin-off』は、楽曲『オウムアムアに幸運を』をテーマとした、『シンデレラガールズ』全体の劇中劇/スピンオフムービーとして作られたもの。
 なので、他の『シンデレラガールズ』作品と繋がっているような繋がっていないような……と言うフワっとした位置づけになっております。
 それは、ファン/プロデューサーの皆様はご存じのとおり、『シンデレラガールズ』関連作品同士も同じで、それぞれ意図的に関連はボカされていることが多いのです。例えば、ゲームとは明らかに異なるストーリーが展開されたテレビアニメ版*1のユニットや交友関係がゲーム版に持ちこされたりとか。
 しかしながら、『Spin-off』は『スターライトステージ』(以下『デレステ』)以外の作品でも、「本作の劇中劇です」と、これまたフワっと取り扱われている/ほのめかされていることのある作品でした。
 ここで、『Spin-off』はどの作品世界線に属するのか、あるいは世界線だと思っていたものはガッチリ繋がっているものだったのか……と明言してしまうと、今後の展開が窮屈になる恐れがあります。さりとて、ハッキリと「これは全部、互いに無関係なパラレルワールドです」と言われると寂しいのがファン心理。
 今回、『デレステ』のイベントコミュはこのあたりに目配せをしながらも踏み込み過ぎない、良い塩梅で、このある種危険でメタフィクショナルな綱渡りを楽しめる部分も良いスパイスになっておりました。


・『Making of Spin-off!』
 と、言うわけで、劇中劇『Spin-off』に挑戦するアイドル達の姿と、アイドル達の演じる『Spin-off』の前日譚を描いた今回のコミュ。
 とりあえず、この2つのドラマを一連のコミュのなかで見事両立したライターさんに拍手を。
 新人アイドル黒崎ちとせの成長と、洋画っぽいセリフ回しの効いた劇中劇、いずれも素晴らしいものでした。
 まぁ、前日譚の方は、あくまで『デレステ』での出来事である以上、完全にオフィシャルと解釈するのは危険かもしれませんが。ライターさんが同じかも分かりませんしね(←オタク特有の面倒くささ)。
 とはいえ、とても良いものでした。
 撮影風景は、グリーンバックの背景画を用意するなど本格的な印象。一方で、幼少期の場面やカーチェイスなど、現実なら代役を立てるようなシーンでもアイドル本人がやっていると描写することでファンの夢を守っているんだなと感じることも。高校生の女の子を合成で小学生にするのは現代ではさすがにファンタジーだと思います。
 撮影風景編のお話のメインとなるのは ちとせ。はじめての演技のお仕事に戸惑いを覚えつつも、共演者である的場理沙や周りの人々に導かれつつ取り組んでいく。余裕のある小悪魔的な姿が常なだけに、ちとせの今回のような姿は新鮮でした。とはいえ、そこで大きなトラブルに繋がらないあたりがさすが ちとせ。
 そんな彼女に気付きを与える役の理沙は、実に頼もしい。
 ちとせたち7人のアイドルが加入したことで、彼女たちが『ポテンシャルの高い後輩』、ほかのアイドル達が『その一歩先を行く先輩』と言う扱いになったように感じていますが、今回もそこが良く活きていたように見えます。
 神谷奈緒佐藤心はバイプレイヤー的な立ち位置だったかな。とはいえ、彼女らも見せ場は十分。
 「あのシーン好きなんだよなー」とテンション高く語る奈緒の姿はまさにオタクらしい可愛さで実に良し。
 心が気遣いスキルを発揮する場面でネギチャーシュー弁当が出てくる辺りは、先述の綱渡りを感じたり。
 佐藤心のきめ細やかな心配りを堪能できる漫画『アイドルマスター after20』はぜひ皆様に読んでいただきたい。
 一ノ瀬志希の活躍は、劇中劇の役『シキ』としての姿が印象的。
 「ちゃんとした思想が無いと」とか序盤に言っていたのに、自暴自棄を起こしていたリサ(理沙)のことを利害の一致と言う体で仲間に誘い、説得する。(逆か?)
 ダブルスタンダードではあるんですけど、それを軽々とやってのけられても「志希らしい」で納得できるのがすごいですね。

 

・劇中劇『Spin-off』(と前日譚)について
 『Spin-off』のテーマのひとつってイマドキの洋画っぽい話をやる現代的な自立した女性像を描くことだと思うんですが、それだけに男っぽさ、女っぽさみたいなものを意識させられるストーリーでした。
 「夫と子供のために生きるのが女性の幸せ」という劇中世界の価値観があからさまですが、一方で序盤にリサがとらわれていた『復讐』、『かたき討ち』、『世界を壊す、変える』と言うのも実に『男の子が好きそう』な要素なんですよね。僕は好きです、ハイ。
 リサのこうした考えは、結局自暴自棄だったと言うところに落ち着き、シキたち3人のお陰で「前を向けた」。
 そのシキたちは、この世界はおかしい、と感じつつも、よくある話(それこそ男の子が好きそうな話)のようにレジスタンス活動をするでなく、このおかしな世界から逃げ出す計画を企んでいます。
 世界からの失踪、と言うと実に志希らしい。
 壊すのではなく、逃げ出すと言う形で、あくまでも「”わたしたちは”イヤだ」と言う形で世界にノーを突き付ける(そしてそれがポジティブに描かれる)のが、なんとなく、そしてとても女性らしいと感じました。
 社会の話になるのではなく、あくまでも心の問題が主軸。
 つまりエモです。
 今回の前日譚で明言されたように、リサたちがチトセ(ちとせ)を助けたのが、利害損得でなく友情のためというのもエモーショナルな話で、実にエモ。(語彙力)
 多分、男の子の好きそうなヤツだったら、チトセが世界脱出のためのキーマンだったとかいう設定が付いてくると思うのですが、全然まったくそんなことはなく、リサはチトセとの友情のため、3人はリサとの友情のための行動(もう全然利害の一致じゃない!)。
 最後にはチトセの勇気と発想が道を作ったとはいえ。
 徹頭徹尾、旧来のいかにも男性的な男性至上主義や合理主義etcをけっ飛ばし、あくまで自分達のスタイルや自分達の感情を軸に行動して、貫く姿は、実に格好良い自立した女性ヒーローの姿だと思いました。
 と、小難しいことはさておき、これからもアイドルたちの格好良い姿を観たいな、という実に小学生並の感想に落ち着くのでした。(苦笑)

*1:2015年放送、全25話、名作