先日、『シン・エヴァンゲリオン:||』を観て、ふと、テレビシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』が放送されていたあたりの頃、自分がどうしていたのかを思い出しました。
1990年代。
当時はビデオと言えばBlu-rayもDVDも無く、VHSと言う媒体だった時代。
思い返せば、現代とはかなり様相が異なっていたことに驚きました。
そこで、今回は自分なりに1990年代のアニメを取り巻く社会を、簡単に振り返ってみようかと思います。
あ、『エヴァ』の話まですると長くなりそうなので割愛。(自分が『エヴァ』を観たのは本放送よりもずっと後からだったというのもありますが)
反響や自分のきまぐれ次第では、『エヴァ』を視聴した当時のことも語るやもしれません。
始める前に、少々の注意点をば。
まず、作品に併記した年代は、基本的に原作では無くアニメの放送開始年代となります。
また、アレコレ書いてますが、キチンと比較検証していない部分も大きいので、資料性は求めないでください。ハイ、話し半分で聞いて(読んで)いただけると助かります。
そして最後。
この記事は、とどのつまりは自分の思い出語りとなりますので、そう言うのが苦手な方はまわれ右でお願いします。
ただ、これを読んでいるあなたとは違う場所・時間にいたいちオタクがどのようにして成立したのか、と言う話のタネや暇つぶしくらいにはなるんじゃないかナーと思います。
・長期シリーズのターニングポイント
長期放送のTVアニメと言えば当時、サザエさん(1969年~放送開始)、ドラえもん(1973年~)、あんぱんマン(1988年~)と国民的キャラクターが出そろってきた感のある時代。
そこに、1990年に『ちびまる子ちゃん』、1992年にアニメ版『クレヨンしんちゃん』が放送開始。ご存じの通り現在まで放送され続け、ご長寿アニメシリーズの仲間入りを果たします。
1992年~1997年には『美少女戦士セーラームーン』が放送。女の子向けスーパーヒーロー作品のフォーマットを打ち立てました。
1997年には、ポケットモンスターが放送開始。ポケットモンスターは上記の中では唯一のテレビゲーム原作であることから、この時期にどれほどゲームが普及してきたのかが伺えますね。
また、ガンダムシリーズも、宇宙世紀の戦争物語から格闘モノへと大きく雰囲気を変えた『機動武道伝Gガンダム』が登場。脱マンネリを果たしました。
新たなキッズ向けロボットアニメシリーズとして『勇者シリーズ』、『エルドランシリーズ』が展開。
いずれも、『シリーズ』とはついているものの各作品の方向性がそれぞれ異なるものでした。
ほかにも、『ドラゴンボール』などの、現在も親しまれている人気タイトルが次々生まれて来た時代でもあります。
この時期を振り返ると、こうした時代を生きたおかげで、自分の中で、アニメ(物語)とは自由で良いんだ、と感じられる下地ができていったように感じます。
『ガンダム』だからと言って、宇宙戦争をしなくても良い。
ロボットアニメだからと言って、毎回同じ必殺技=バンクフィルムを使わなくても良い。
ポケットモンスターは、バトルが無くても、人間とポケモンが出てくればどんな話になっても良い。
そんな時代のアニメを観たことから、長期アニメシリーズでどれほどブッ飛んだ方向性に行こうと、「なるほど今回はこう来たのか!」とスンナリ受け入れられるようになったと思います。
・『マニア向け作品』の夕方放送とレンタルビデオ店について
今も昔もアニメオタク向けの作品と言うものは作られていますが、こと90年代と言う時期は少しユニークな時期でした。
と、言うのも1980年代のOVAブーム*1がひと段落し、かつ深夜アニメが今ほど一般的では無かった時期。
つまり、平日の夕方にマニア向けの作品がオンエアされていた時代だったのです。
当時、水曜日の夕食前になんとなく観ていた『BLUE SEED』(1994年)を解説しているウィキペディア先生を見ると、『マニア向け作品をテレビで放送(中略)するビジネスモデルのはしりとなった作品とも言われている』*2とあります。
これを信じるなら、どうやら1994年ごろからマニア向け作品のテレビ放送が増えてきたようです。
『バトルアスリーテス大運動会』(1997年)、『アキハバラ電脳組』(1998年)、『セイバーマリオネットJtoX』(1999年)など、後に言う『萌えアニメ』のはしりのような作品も平日の夕方に放送されていました。
そうした状況が何を意味するのかと言うと、OVAのようにお金を払わずとも、あるいは深夜アニメのように放送時間帯や配信サイトを調べずとも、ただただ何の気なしにテレビをつければオタク向け作品が観られると言う状況だったワケです。
それが、当時のテレビっ子……いえ、ぶっちゃけると自分にどういう影響を与えたかと言えば、『自分よりも年長のヒトたち向けのアニメ』が存在していて、それがとても面白いと言うことをカジュアルに実感できる状況にあったわけです。
用語やストーリーが難解だったこともありましたが、毎週のお楽しみとしてついつい観る、そんな流れが自分の中でできあがっていきました。
もしもビデオソフトでしか発売されていなかったら、『BLUE SEED』などの作品はマニアにしか日の目を見なかったわけで、オタク・非オタク問わず気軽に視聴できたという状況が当時のアニメ文化に影響を与えた……と感じるのは自分だけでしょうか。
『ロストユニバース』(1998年)のアニメを観てから原作を読んで『スレイヤーズ』との関係に驚いたり、『機動戦艦ナデシコ』のビデオを観たくらいのころテキトーにテレビをつけると『サイレントメビウス』や『怪傑!蒸気探偵団』が放送されて一年中麻宮貴亜先生の画を観ていたと言う(ことを後で知った)濃厚な1998年を過ごしたのは良い思い出……と、脱線脱線。
ビデオ、と言えば当時『TSUTAYA』のような広くて綺麗な大手レンタルビデオ店が増えてきていたのも印象的。個人的な体験として、『TSUTAYA』が近隣にできるまでは、少しせまくて暗めなレンタルビデオショップに通っていたと言うことがありました。お客さんも、親子連れの方が少なく、誰も何も言いませんでしたが子供1人で来ていた自分はいま考えると珍しがられていたのかもしれません。
レンタルビデオ店の主な収入源はエッチなビデオだったらしいですし。
それが、『TSUTAYA』が近所の駅前に出来て、レンタルビデオ店は親子連れが多く訪れる場所と相成りました。
もっとも、実際のところ大手レンタルビデオ店の普及と店内環境・客層の変化が全国的にどのようであったのか、はっきりしたことは言えません。
しかし、動画配信サービスの無い時代に、幅広い年代の人々が過去の名作に触れる機会が増えたことは事実でしょう。
・アニメの”拡大”
そのほか、当時のアニメの変化として、少年漫画原作とするアニメであっても、目が小さく、頭身が高いキャラクターが活躍する作品が増えてきたことがあげられます。
具体的には、『SLAMDUNK』(1993年)や『GTO』(1999年)、『NINKU -忍空-』(1995年)などですね。
こうした作品のキャラクターたちは子ども心にとても大人っぽく見えて衝撃でした。いや、自分だけかもしれませんが。
当時の少年漫画と言えば、『ドラゴンボール』のように、頭身が高くても眼は大きいと言うのが多数派でしたから。いや、本当に自分が感じていただけかもしれませんが。
こうして大人びたキャラクター達がメインを張る漫画は、幼い子供や小学生だけでなく、さらに上の年齢層まで人気が波及したように感じます。(やはり、これもきちんと調べたわけでは無いので確たることは言えないのですが……)
『GTO』そして『金田一少年の事件簿』はドラマも制作されて大ブレイク。(『金田一~』が1995年、『GTO』が1999年放送)
『金田一~』は堂本光一さんの代表作となり、本作は後にキャストを変えて計4シリーズが制作されるほどの人気となりました。
この2作は『少年マガジン』で連載されていた作品でした。
きちんと比較検証したわけではありませんが、この2作以降、少年誌原作のドラマ・映画が以前よりも多く制作されるように感じます。
少年向け、とされていても少年のみならずそれより上の年代、そして女性にも訴えかける力がある、と大いに認知されるきっかけになったではないかと思います。
正直なところ、当時は「アニメは子どもが観るもので、いつかは卒業する物だよ」という化石のような言説が、まだどことなく多数派だった時代でもあったと思います。
自分自身、誰かがそんなことを聞いているのをよく聞いた気もします。
それでも親から何も言われなかったのは、テレビの前なら大人しくしていたからでしょうか。いや、その件については両親には本当に感謝しています。
しかしながら、バラエティに富んだ長期アニメシリーズ、『マニア向け作品』が夕方に視聴可能だった状況、多彩なキャラクターデザイン、それにドラマ原作。
奇しくも、1990年代と言う時代は、「アニメって面白いよ!」と言うメッセージが多方向から飛んで来ていた時代だった。
自分は、そう感じられてならないのです。
いかがだったでしょうか。
以上が、自分の見た1990年代のアニメ社会、あるいはその感想です。
現代では、アニメは親子で楽しむ時代となり、視聴形態も多様化しています。ええ、それこそドラえもんを知らない日本人がいないくらいに。(1990年代に幼少期を生きた人間のシリアスな実感として、「ドラえもんはおじいちゃんおばあちゃん世代は知らないかも……」みたいな感覚があったのです。)
そんな、自分の幼少期からは大きく変わった時代で自分や、そしてあなたが、どのようなアニメの思い出を作って行くのかと考えると、楽しい気持ちになりますね。
*1:本が一冊できるてもまだ足りないくらいにたくさんのアニメ作品がOVAと言うビデオソフト限定で発売されたそうです。