遂に登場した新ヒーロー、ドンブラザーズ。
レジェンド、田﨑(たさき)竜太監督に井上敏樹先生脚本ということもあり、ファンの間では注目の作品ですね。
こちらでも第1話の感想を書かせていただきます……第2話が始まる前に何とか!
ドンブラザーズ1話、「井上節とはこういうものです」というものを制作サイドもすごく良く理解して、バランスを取って演出されてる感じがする。良くコントロールされていると言っても良い。#特撮
— UG/YM (@fai2blst) 2022年3月12日
ジェットコースターのごとき30分でしたが、実のところ大変心地の良い速度のジェットコースターいった塩梅。
過去に井上敏樹先生が脚本を担当した作品を何作か観たことはありましたが、それらと比べると視聴者が振り落とされないようにと、これまで以上に親切設計された第1話だったかと。
その要となっているのが狂言回し役の鬼頭はるか=オニシスター。
彼女に焦点を合わせれば、視聴者の代わりに困惑もツッコミも絶妙なタイミングでやってくれます。
おかげで、「あ、ココはわからなくて良いところなのか」「突っ込んでいいところなのか」と安心。
そのはるか嬢、系譜としては『井上脚本にいるツンツン系ヒロイン』の系譜ではあるのですが、女子高生であることがツンツン具合を良い感じに緩和している印象を受けました。
もっと言えば、子どもっぽい、いえ少女らしい。
志田こはくさんという、どこか柔らかい雰囲気の方に演じられていることに加えて、シリアスな場面でも”よっぴー”という若者らしい愛称で相手を呼んでいるのが少女らしい。
人にぶつかったら謝れるし、人を消す脳人に憤る正義感といった描写もある。
そんな女の子が少々調子に乗っていても微笑ましいと思う程度。
実に観やすい画面です。
この辺りは、雉野つよし=キジブラザーにも感じられます。
彼も、一つ一つの台詞だけを見ると案外とツンツンしていて、いきなり戦場に転送されて軽いヒステリーを起こしている、という方向の演技もアリだったのではと感じられます。
しかし、役者さんと演技の方向性が”優しそう”という方向に向いているので、ツンツン感よりも、「アンタも苦労してるんだな……」という気持ちに向きやすい。
ヒーロー側に多少キツめな性格が感じられても、それ以外の要素が強く押し出されているので親しみやすく観ることができました。
このあたりは、最初のキャスティングの段階からかなり気を使われているのかもしれません。
一方、ワルの要素を今回一手に担っていたのが謎めいた上位存在”脳人”のソノイさん。
放送前は美形ながら悪役かと思いきや、バイクに乗って颯爽と現れたり、ブレスレットを格好良く構えて変身したり、とまるでヒーロー。
はるかのモノローグでも言わせるくらいにヒーロー。
あのブレス、絶対オモチャになるやつですよネ!
しかし、その実態は、ヒトツ鬼と化した人間を冷酷に消去する処刑人。
草加雅人*1や名護啓介*2など、井上敏樹の作品には『怪人を(容赦なく)キッチリやっつけるけれど、それ以外のところで問題のあるヒーロー』がしばしば登場し、正義の在り方に疑問を投げかけていました。
その系譜が感じられるソノイたち脳人が、今回ヴィランとして設定されている有様は、”井上節”の集大成が感じられ、今後の展開が否応なく期待されます。
そんな脳人やヒトツ鬼と向こうを張るのが、我らがセンター、桃井タロウ=ドンモモタロウ。
メインの出番は戦闘シーンで颯爽と……というか大仰に出てきてからというのがすごい。
一方で、初回から戦隊が全員揃わない=そろい踏みの名乗りシーンが無いという作品的な弱み(スーパー戦隊的に)をレッド単独の名乗りを派手にすることで対応するというクレバーな戦略も感じられて良い。
また、今回ヒーローたちが”どこからともなく颯爽と”やってくるんですよね。
ドンモモタロウも、ソノイも、キジブラザーもはるかの視点からは、何も無いところから人々を助けにやってきたように見える。
このあたりは、”どこからともなく颯爽とやってくる”ヒーローものの古典的な文法を現代に落とし込めないかというチャレンジが感じられます。
今回の怪人枠は(ベニツ鬼に似た)騎士竜鬼。
『キラメイジャー』の邪面師や『ゼンカイジャー』のワルドのフォーマットが良い感じに継承されていますね。
レジェンド戦隊モチーフの怪人ですが、脳人が加工?を施さないと出てこない設定が絶妙。
必ずしも全話、全戦隊出てこなくても良い理由づけになっています。
すくなくとも、玩具『DXドンブラスター』でフィーチャーされている過去10戦隊の怪人は出るのでしょうけれど、その後がどうなるのか気になりますね。
そんな騎士竜鬼=騎士竜鬼ングとの巨大戦は脳人レイヤーと呼ばれるコンピューターめいた謎空間で展開。メビドンドン
現実とつながっている場所なので、現実空間にも戦いの被害は出るし、キジブラザー達がそれに対応している、という描写が入っているのが良い。
暗い空間となっているのはCGと実写の違和感を軽減するためでしょうか。
この脳人レイヤーの描写、あくまで現実に重なっているという描写なので、必ずしも毎回合成を使わなくても良くなっているのが良い。
また、メガネの付け外しで、まるである日突然霊が*3見えるようになったような、オカルト作品的な文脈にあるのが面白い。
さて今回、共に戦ったにも関わらず、互いのことをまるで知らない3人。
戦いのときに呼び出されるということは、国外にいる仲間とかもいるのでしょうか。
果たして、5人そろい踏みするのはいつの日か。
その前に、自己紹介の方が先のようですが。