スマートフォン向けゲーム『fate/grand order』メインシナリオ『第6.5章 死相顕現界域トラオム 或る幻想の生と死』の感想をば。
いやはや、今回も文章量たっぷり。
FGOは、イベントは割合カジュアルに読めるのに対し、本編はじっくりと読み込むボリュームになっているギャップが素晴らしいですね。
今回はそのボリュームにふさわしいスケール感が大きな魅力でした。
なにしろメインは3つの勢力、それもメンバーは全員サーヴァント!
まさか、サーヴァントがモブになる日がこようとは。
基本7クラスの立ち絵が描き起こされる気合の入りっぷりも凄まじい。(今回はアニメーション演出など、ビジュアル表現にも力が入っていましたね)
さながら、fate/apocryphaのスケールアップ版ともいうべき世界でした。
実際、ヴラド3世やアストルフォ、そしてジークフリートといったキャスティングには同作の影響が感じられます。
名もなきサーヴァントたちはサーヴァントは決して単なる舞台装置では無く、それぞれの人生、それぞれの物語があったことが台詞から感じ取れました。
主人公を助けてくれた名も無い7騎の印象がやはり強いですが、1,2行程度しか台詞の無いサーヴァントにも、個性が出てるのがすごいです。
少なくとも、何人かには真名がきちんと設定されているのではないでしょうか。
そんなサーヴァントたちを束ねる者はやはり只者では無い、ということでそれぞれの陣営で異なった形のリーダーの在り方が描かれていたのも印象的でしたね。
恐怖と、その優れた洞察力で復讐界域を束ねるクリームヒルト。
秩序で束ねながらも、必要とあらば血を流すことを厭わないコンスタンティノス11世。
偽のカール大帝として能力不足を感じつつも、リーダーとしての責任を全うしようとするドン・キホーテ。
そんな彼を支えることになる、厳しくも丁寧に軍を束ねるヴラド3世。
遅れて表れたシャルルマーニュは、きめ細かな気遣いで、信頼する仲間たちが”カッコ良く”戦えるように道筋を示す。
いずれも、違った形で素晴らしいリーダーなのでは無いでしょうか。
特に気に入ったのはドン・キホーテのキャラ造型。
比較的平和な時代に生きていたという”現実”アロンソ・キハーノとしての有様、そして勇敢さを重んじる騎士道物語への憧れから生まれたドン・キホーテ。
彼を構成する両方の要素が、彼を『良い人』として形作っている。
平和な時代の穏やかな営みの記憶も、勇壮な騎士たちの記憶も、どちらかが欠けていたら彼はここまで良い人では無かったことでしょう。(そして、カルデアは詰んでいた)
現実も、幻想も、どちらも善なるもののベースになっていて欲しいという作り手の願いが感じられるキャラクター造型でした。
それだけに、物語の騎士そのものというべきシャルルマーニュが彼を認め、助けたのは、最高の展開でした。
構成的には、どの陣営が味方になるのかは分からない段階で、ラスボスとなる復讐界域と最初に対峙する形になるので、「どの陣営と最後に戦うのか!?」と結構ハラハラさせられましたね。
復讐界域パートではサロメが完全に主役。
『fgo』では、しばしば失恋を受け入れて前に進む、カッコ良い女の子が登場しますが、サロメもまたその系譜に名を刻むことになるとは思いませんでした。
クリームヒルトからは憐憫と断じられたものの、そうしたありふれた善性を尊重することは、人として実に大切なことなのではないでしょうか。
バーサーカーといえば、後に清姫も登場。
嘘を憎むという性質が英霊としての矜持のごとくなっているのは、素直に格好良い!と思いつつもそれで良いのかとも思いつつ。
マスターだから、とかでなく主人公個人の気質に安珍の面影?を感じるのは、カルデアでの古参サーヴァントでもある彼女らしい味わいでし。
ルーラー、若きジェームズ・モリアーティ。
野心に満ちた、若き日の犯罪王。
頭脳のキレは老年に決して劣らないハズなのですが、挑発した相手にやり返されたりと、青さを感じられるのが面白い。
そして、モリアーティが立ちふさがるということはやはり……ということでホームズの正体開示と退場。
自らの手で、自分のマスターという謎を解くあたりは、名探偵の矜持というべきか。
「あるいは、幻想のように」という一文は実にいろいろな想いを感じさせます。
名探偵の代名詞というくらいに有名なシャーロック・ホームズ。
それだけに、後世の作品では様々なキャラクター付けがされてきました。
なかには、ホームズ本人よりも正義の味方をしていたケースも。
そんな幻想に恥じないような、正義の味方でありたかった、そんなホームズの思いが感じられます。
特異点のマスター達の正体という大いなる謎が明らかになることのないまま、まさかのモリアーティを案内役にたどり着いたのは、エリア
今回、単純に敵味方に割り切れない関係が多いのが面白いですね。
そこで目にしたのが、検体E。
実験台に寝かされているかと思いきや、それにもたれかかるように倒れているという意外な状態。
助け起こそうにも触れて良いものなのかさえ分からない相手を前に、第7章の展開が待たれます。