第22話「白い仮面の男」
SKIPに降りかかる奇妙な事件!
今回は、画面からして今までのエピソードとは一味違う感じに。
敢えて他の作品に当てはめるのなら『ジョジョの奇妙な冒険』や『SCP財団』にどこか似た感じの雰囲気になっていました。
アバンから、色彩の少なくなった世界。
「最近晴れ続き」と言う和やかな会話がされているだけに、その異常性が際立ちます。
最近、怪獣被害が観測されていない、と言うところから、他愛もない日常の会話。もしもSKIPが解散になったら、と言う流れに、それはイヤと言うリンさんと定年退職後にやることを考えていたヒロシ所長がなんとも意外。そこへ傘を無くした、と言うユウマ。いつかのサングラスに続き、ちょいちょい物を無くす子だなぁ、と思いきや……。
そこから、少しずつ『異常』が浸食していることが露わになっていきます。
決定的になったのは、SKIP星元市分所の消失。
ヒロシ所長は念願の喫茶店『きょうりゅうや』もとい『白樺』のマスターに。(『爆竜戦隊アバレンジャー』12月14日現在、公式無料配信中!)
喫茶店のマスターがすっかり板に着いたヒロシさんは、ユウマたちとの距離感がまるで異なり、完全な別人になってしまったかのよう。
この事態、内心でSKIPが不要になった未来を考えていたヒロシさんだから一番に敵の術中にハマってしまったのか、あるいは敵がSKIPの最高責任者と見て真っ先にヒロシさんを狙ったのか、判断に迷う所。
現象とも、恣意的な攻撃ともつかない摩訶不思議な出来事。
今回の”敵”は、この異常現象そのもの、と言った質感を感じました。楽園夢想遺構『柱』や楽園夢想人『白い仮面の男』と言った存在は登場するものの、彼らは事態を『分かりやすく』してくれる存在、と言う風に見えます。
SKIP分所の消失は、すなわちユピー・ザ・ロボットの行方も知れないと言う事。
好きな仕事も、自分の生み出したロボットも奪われたリンさんが意気消沈してしまうのも仕方のないことです。
そんなリンさんの隙を突くかのように、謎の白い仮面の男が彼女を消してしまいます。
非常事態にユウマが連絡を取ったシュウさんの対応が素晴らしかったですよね。
彼にも、助力を求める防衛隊への行き方が分からなくなる、と言う異常が起きていました。
全くの異常な事態に、彼自身動揺していないハズ。
それにも関わらず、事態を落ち着いて分析し、ユウマを勇気づけることを忘れない姿勢はまさに防衛隊。
考えること、想像することを止めるべきではない、と言う彼の言葉は、今回のテーマを端的に述べていたのでは無いでしょうか。
残念ながら、そんな彼も仮面の男に消されてしまうわけですが。
リンさんのときと違って、直接シュウの目の前に現れたのは、それだけ彼が脅威だと感じたと言う事なのかも。
さらには、ユウマの前に現れた仮面の男は、己の目的を述べます。
今回の説明役、とも言うべき仮面の男。
しかし、説明をされても、楽園夢想遺構『柱』のことはともかく、仮面の男自身のパーソナリティはまるで見えてきません。
ひょっとすると、シュウが考えたように、宇宙から来た研究者だった可能性さえあります。
楽園を夢見る、と嘯く男ですが、ユウマたちの笑顔と画面の色彩を奪うその行いが人々の幸福に繋がるとはとうてい思えませんよね。今回、とにかく画面の暗さが不安をあおる!この効果のために、ほぼ全編に渡って画面に加工を施しているんですから気合入ってますよね。
当然、敵の言葉を拒むユウマですが、遂に彼も男と柱の術中に……
こうして、男と柱が作り上げた『楽園』。
その中で、ユウマたちは喫茶店で働く一般市民に。
マスターのヒロシさん、ウェイトレスのリンさん、店員のユウマに、コーヒー豆業者のシュウさん。
『ブレーザー』世界に続き、登場人物の異なる装いそのものは新鮮なのですが、事態はシリアスな状況に。
奇怪な装いの客=白い仮面の男にウェイトレスのリンさんがノーリアクション、と言う時点で、ことの異常性が伝わってきます。
『楽園』の中で楽しそうに暮らしている、とはとても思えないユウマ店員。
そこからの逆転は、敢えての幻想的な映像でした。
忘れさせられても体が覚えている幼き日の体験、水≒雨、鏡面、掌のチョークの色彩、幼い日に描いたヒーロー。
モノローグで説明をかけても良いところを敢えてすっ飛ばして、映像のパワーで押し切る演出は見事。
『柱』の前に降り立ったアーク。
不思議な力でアークを妨害する。
アークのエネルギーと色彩は奪われ、カラータイマーが点滅。
必殺のアークファイナライズで一気に押し切る。
時間にすると短時間、なんとも呆気ない決着ですが、色彩の無い世界に生まれるアークファイナライズ=光と色彩が、世界全体の色彩を取り戻す、非常にカタルシスに満ちた、鮮烈な映像でした。
戦いが終わり、しかし怪獣と言う脅威の存在する世界へと戻った星元市。
シュウの腕のケガも戻り、天気雨も降り始める。
しかし、「雨もたまには良いものですね」と語るユウマの表情は実に晴れやか。