1,2巻が『booklive』 さんで無料公開されていたので、かるく読了。
『永世』と言う言葉を知らなかったので、最初は「なんの漫画?」 と言う感もありましたが、読み終えると、なるほど確かに、 これは『乙女の戦い』だ!
あらすじをまとめると、17歳の女流棋士、 早乙女香が強豪棋士たちと盤上で苛烈な戦いを繰り広げるお話…… と言ったところでしょうか。(サイアクなまとめだ!)
自分は全くもって将棋のルールが分からないので、 読みながらずっと「へー」と言っているような有様だったり。
しかし、将棋初心者のお姉さん、支倉さん(編集者・27歳) がサブ主人公的な立ち位置で登場するので初心者でも安心して読めるのが嬉しい。
さて、そんな本作は女の子たちが優雅に将棋を指すお上品な漫画… …ではありません。
「将棋指しは、負けると死ぬ。」
そんなモノローグを差し挟むくらい、主人公・ 香にとって将棋は自分の全て、 命そのものと言って過言ではありません。
そして、その本気度はほかの棋士たちも負けず劣らず。
そう、彼女たちにとって将棋とは精神的な殺し合い。
普段は朗らか笑顔の乙女たちが、 試合中は相手をブッ刺しにいかんばかりの、 スゲェ目つきに豹変するギャップがこの作品の持ち味なのです。
( 主人公、試合中はだいたい単行本の表紙のような表情をしています)
ねぇ、このコたちの手に持ってるのは将棋の駒だよね? なんでナイフ持って無いの?
実際、作中のイメージシーンでは表情にふさわしいサスペンスフルな絵面も見られます。
それに相応しく物騒なセリフ回しも少なくありません。
「勝てたら、最高。」を「死んでくれたら、最高。」 と書く将棋漫画は、そうそうないんじゃないでしょうか。
このように、ヒリヒリするくらい苛烈なこの漫画。
けれども、いえ、 だからこそドロドロしないバランスで仕上がってもいます。
なぜなら、登場人物の行動原理が『将棋で勝つこと』 に集約されているから。
そのため、 試合の外に禍根を持ちこみすぎる展開にならないんですよね。
たとえば、勝つために下剤入りの飲み物を飲ませます、 みたいな展開は今のところ起こりません(1,2巻現在)。
あくまで正々堂々、実力で相手に勝つ= ブッ殺すことでのみでしか問題解決ができることを棋士たちは分かっているんです。
そして、その全ては将棋が大好きすぎる結果なのですから、 微笑ましいと言えば微笑ましい。 動物園で狂暴なワニを見守るような微笑ましさですが。
また、結構コメディもはさんでくれるので、 キャラクターたちに親しみもわく。
どれだけ激しい喧嘩をしても終わればノーサイド、 みたいな爽やかなヤンキーマンガのような読後感があります。
個人的なお気に入りは、ライバルの1人?の須賀田空( すがたうつろ)。
14歳という(女性としての) アイデンティティが確立しきらない年代であることと将棋の世界が ミックスされた結果、 ティーンエイジャー特有の面倒くささが凝縮されたような性格がで きあがっているのが素敵。今回は『吠える犬』 のような立ち位置となった彼女がどう成長していくのか気になりま す。
乙女たちが命がけの戦いへ真剣に打ち込む姿を見たい、 けれどあまりカゲキな暴力描写や、 昼ドラ的なドロドロはちょっと…… と言う方にもお勧めの一作です。
同作者の『笑顔のたえない職場です。』も良かったし、 この作者さんの本一冊買おうかなー。