タイトル通り、心温まる人情噺としての側面もありつつ、石堂さんメインのサスペンスドラマと言う二面性が特徴のエピソード。
人情噺的なSKIP側の世界観と、刑事ドラマ的な防衛隊のシビアな世界観のぶつかり合いが物語的な面白さを生んでいました。
頻発する地震と電磁波の発生に、調査に乗り出したSKIP。
UFOと言う単語に目を光らせる石堂さん。
一般人にとっては他愛のない話だとしても、防衛隊にとっては聞き捨てならない、そうしたギャップが感じられるシーン。
そう言えば、電磁波については結局ハッキリとした説明がありませんでしたね。宇宙船から発生したものと言うことで良いのかしら?
今回、細かいところが分からなかったり、説明されなくても楽しめるのが良いですね。
調査の過程でSKIPが訪れた旅館、あけぼの荘。
女将さんのアヤカさんと番頭のヌマタさん、そして従業員のヤマナミさん。
おそらくはシーズンオフとはいえ、決して狭くはない旅館を3人で切り盛りするとは大変ですね。
彼らの態度、そして不思議なサインから疑いの目を向ける石堂さん。
きのこ御前(サラっと映された入り口の張り紙で情報が出ているのがオシャレ)のランチを口実に、さらなる調査へ。
いつになく剣呑な態度の石堂に戸惑うユウマとリン。
ただ、石堂さんがピリピリするのも当然の話ではあるんですよね。
この後断片的に語られる『宇宙人案件』は、ときに侵略戦争を吹っ掛けようとしてくる宇宙人との、騙し騙され、命をも賭けた諜報戦。
SKIPや星元市がその被害に遭うかも、と思うと石堂さんの態度も仕方が無いと言えます。
最悪の事態を想定して行動する、と言う石堂さんのスタンスそれ自体は決して間違ってはいないと言えましょう。
ヌマタさんを追う中で発見する宇宙船。
この宇宙船、船体だけではなく、内部のスイッチ類もキノコに似ているのが面白い。
そして、変装用の機械が壊れたヌマタさんは茸狩宇宙人クロコ星人だった、と言う種明かし。
スーツとしてはシンプルに留めて、宇宙人が地球の服を着ている面白さを表現しているのがお見事。
本人が語るところによれば、地球にキノコ狩りに来ただけの宇宙人。
緊急事態により地球を出ることになった仲間の宇宙船に乗り遅れ、地球に取り残されてしまった、とのこと。
地球への無断侵入(推定)に不法滞在、と地球の法に触れる行いではあるものの、侵略宇宙人に比べると圧倒的に無害だった番頭さん。いえ、法を犯してしまったことには変わりありませんが。
この辺りは、地球とクロコ星との考え方の違い、と言うことなのでしょう。
クロコ星、南国のようなおおらかな気風なのかもしれません。
そこに現れた、地震の原因=シャゴン。
第1話からの早くの再登場。
ユウマも名前も知っている位に、作中世界では一般的な怪獣と言う要素を活かした再登板です。
しかも、今回は複数のシャゴンが同時出現。
オープニングでもシャゴンのスーツアクターさんは1人しかクレジットされていないことから見て、一つのスーツを編集や合成で複数に見せているようですね。
そこに違和感が無いのはさすがの匠の技。
あけぼの荘に迫るシャゴン。
天井を突き破る手が、シンプルな表現ながら、迫力満点。
しかし、見事にブッ壊れたあけぼの荘。修復は大丈夫だったのでしょうか……?
最初から納得ずくだった女将さんとヤマナミさんに逃がされるヌマタさん。
ヤマナミさんが始終いい味を出していますよね。いかにも「普通のおばちゃん」と言う感じが素敵。
ヌマタさん/クロコ星人の姿に特別なリアクションが無かったり、と言うところだけで、ヤマナミさんも”共犯者”だった、とサラっと説明するのがオシャレ。
彼らを救うべく変身する(ドサクサに紛れて一人脱出した)ユウマ。
ウルトラハグが毎回無いのはちょっと寂しいものの、アークアライザーの出現シークエンスは毎回合成なので、やはり手間がかかっていますね。
1体目のシャゴンは光輪とバリアの驚きの合体技で撃破。
しかし、そこへ新たなシャゴンが。下手をすると第4、第5のシャゴンも……?
ソリスアーマーで応戦するも、あけぼの荘に迫るシャゴン。
しかし、そこへヌマタさんの乗る宇宙船が特攻!
母星へ帰るためだけ、帰るのがやっとの、非武装の宇宙船の、数少ない攻撃手段。
己の命だけでなく、母星へ帰る手段さえも投げ打っての、まさに決死の行動。
この後、九死に一生を得ることを差し引いても、ヌマタさんの覚悟はすさまじいものがあります。
ソリスアーマーのアークは、ソードでシャゴンを一刀両断。
太陽のようなフィールドを発生させるド派手なシークエンスを挟みつつも、居合斬りのように短い時間で決着をつけるのがアークアイソードの持ち味ですね。
最後のシャゴンの戦意を喪失させ、住処へ帰すアーク。
この辺りは、戦意を喪失した この戦いがあくまで害獣駆除の範囲内であることを表しているよう。
山から下りてきたクマを、町の安全のために撃つようなもの。
なので、追い払ったシャゴンは監視体制の強化、と言う落としどころに。
戦いの後、九死に一生を得たヌマタさんは防衛隊へ引き渡し。
不法滞在者の宇宙人を防衛隊が捨て置くわけにも、放っておくわけにも行かない、と言う現代的な厳しいリアリティーがありつつも、遠からずあけぼの荘へ戻って来れるだろう、と言う希望を感じさせるラスト。
ユウマの姿勢を通して己を顧みた石堂さん。
防衛隊としては石堂さんの動きも決して間違ってはいないものの、今回に関しては他者の善性を見落とさず、信じるユウマのスタンスが適切だった、と言うことでしょう。
そして、ヌマタさんへクロコ星のサインの意味を聞く石堂さん。
容疑者としてではなく、ヌマタさんと言う個人へのコミュニケーションを初めて試みたと言うのが良い。
サインの意味は何通りもある、と言うのが地球の言語にも似ていて良いですね。「アロハ」のように日常的に使われるのでしょう。
そして、その一番の意味は「ありがとう」。