キャラクターのかわいらしさ、そして動物映画的な感動!
どうしても戦いの物語に終始することの多い(いやそれも良いのですけれど)『仮面ライダー』の映画にあって珍しい要素が中核をなす新たな冬映画。
『仮面ライダー』と言うシリーズの懐がまたひとつ広がったことを感じました。
今回、『ギーツ』、『ガッチャード』ともに派手な設定の通る道具立てが整っていることに改めて唸らされましたね(未来技術&錬金術)
そこに、今回はクロスウィザードの魔法が加わることで、人間のケミー化と言う異常事態の説明をすっ飛ばせるのが素晴らしい。
本作はあまり説明に時間を取ってはくれないのですが、それが気にならないんですよね。
なので、限られた上映時間の中で見せ場をガンガンに展開してくれる、実に『ガッチャード』らしい楽しさのある映画となっております。
『ギーツ』『ガッチャード』両作品に携わった山口監督と言うことで、『ギーツ』チームのアクションがきちんとスタイリッシュなのも感動。
キャラクターが登場するだけでなく、作品そのものの色が表現されるのは嬉しい所。
個々のキャラクターの『らしさ』を感じられる台詞が
脚本の内田祐基さんは『仮面ライダーリバイス The Mystery』でも数多くのレジェンド要素を織り込んだ脚本を手掛けており、本作でも見事なコラボレーションを見せています。
家族だけは泣かせたらいけない、と言う景和の重い台詞をコミカルなシーンに入れ込むとは……!
劇場版と言うことでCGにもかなり力が入っていました。
特にギーツケミーは有名人ゲスト枠と言うこともあってか、CGモデルの毛並みなど、特に力が入っていたように感じます。
メインゲストのクロスウィザードの声は、かつてはニチアサに出演されて、今や人気声優の一角である高橋李依さん。
自分があまり声優さんに詳しくないと言うのもありますが、自分が高橋さんの少年役を聴いたのは初めてかと。少女役とはだいぶ異なるお声な印象で驚きました。
一方で、敵か味方か分からない序盤の時点からワルっぽく聞こえない(けど話として違和感は無い)演じ方をされているのは、さすがのバランス感覚だと感嘆しました。
クロスウィザードが言葉を話すことができるということで、ケミーは純真であるがゆえに困ったこともするし、悪に利用されることもある、と言うことが分かりやすく示されていたように感じました。
ケミー化した『ギーツ』ライダーたちは概ねギャグキャラに寄っていたのが印象的でしたが、道長だけはケミー化に対して割合冷静だったのが、ベテランの風格を感じたり。
それでも「モー!」とか言うキャラになってましたけど(笑)
そんなクロスウィザードに導かれての『ギーツ』『ガッチャード』のチームアップ。
『ガッチャード』は仮面ライダーが少ないと言うことを差し引いても、錆丸先輩と蓮華お姉さんがライダーと対等の扱いを当たり前にされているのは、感じ入るところがありますね。
自分としては、宝太郎と一緒にワタワタしつつも要所でお兄さんぶりを見せてくれる景和の姿が良かったですね。
そんな『ギーツ』『ガッチャード』の面々がナンバー10のケミーたちに挑む楽しい冒険映画……で終わるかに見えたタイミングで現れた黒幕。
キャラクターたちのワチャワチャですっかり気が緩んでいた観客に、これは『仮面ライダー』だった!?と思い出させてくれました。
釘宮リヒト。まさかテレビシリーズでの登場が、劇場版に向けての先行登場だとはだれが思うか!?と言うサプライズ。
しかも、かつてデザグラに出場経験があったと言う両作品をクロスオーバーした過去。
過去の姿は古代ローマの剣闘士のようないでたちでしたけれど、デザグラであれば”それっぽい”ユニフォームを着せる、と言ったことも十分にあり得る、と違和感が少ないのがすごい。
英寿転生の謎をどうやって知ったのか?などの謎は多いのですけれど、これまた錬金術でどうにかしたのだろう、と想像の余地があり、と良い意味でのハッタリの効いた設定のキャラクター。
それにしても、言い方は悪いですが、2000年以上生きてなお、釘宮は錬金連合の調査官どまり、でもあるんですよね。連合での出世が目的で無かったとはいえ。
ほかの上級錬金術師たちはどのような化け物揃いなのか、と錬金連合の底知れなさも感じられます。
ウィザードマルガムによってスナック感覚で引き起こされた世界の危機を前に対抗せんとするりんね。
敢えて再び悪夢の中へ入ったのは、大きな力を行使する前のマインドセットに近かったんじゃないかと理解しています。
夢の中での父との対話で意志を奮い立たせたりんねがついに変身!その字は仮面ライダーマジェード!
格好良いテーマ曲を背景にした戦いぶりは優雅の一言。
個人的には、初の女性ライダーファムと同じくハイヒールなのがアツい。
しかし、マジェードライバーはどこから現れたのか、謎すぎるアイテムですね。
「託したぞ」と語る風雅の姿はイメージなのか、あるいは……と今後に向けての謎が増えていったシーンでもありました。
孔雀の装飾がされた剣を手に、ウィザードマルガムからギーツキラーへと変貌を遂げる釘宮リヒト。
ギーツケミーを吸収することでの変貌と言うことで、『ガッチャード』のルールに忠実な、ぶっちゃけギーツマルガムとも言うべき存在なのですが、仮称がアナザーギーツだったと言うことで、平成の影響力が未だ強いことを感じたり感じなかったり。
最終的に巨大化するのは、奇しくもクロスギーツと同様で、思わずクスリと。
劇場版『ギーツ』ではクロスギーツがとんでもなく投げやりな流れでされた巨大化を、今回は大真面目にやったギーツキラーなわけですが、結果は……。
そんな、2000年の時を転生し続けた男としてのエース=浮世英寿に対峙した釘宮リヒト。
たしかに、転生の経験は英寿にとっては大きなアドバンテージであります。
では、今世としての浮世英寿の価値は?と言うところで明かされたギーツケミーの正体。
それは、浮世英寿の愛犬コンスタンティンの魂。(赤い炎がウィザードマルガム?と思わせつつギーツカラーと言うのは好きなミスリード)
陰に日向に助けてくれたギーツケミーがいなければ、今回の事件がどうなっていたか分からないわけで、浮世英寿が今世をきちんと生きたからこそ掴んだ勝利と言えるでしょう。
2000年に対する釘宮と今生に対するコンスタンティンと好対照。
舞台設定は大きく『ガッチャード』によりつつも、最終的に浮世英寿=仮面ライダーギーツに集約する、綺麗なクロスオーバー作品でした。
同時に『ギーツ』側の時系列には、良い意味で重要な影響のない作品でもあり。
余韻に浸りつつ、本作に何ら気兼ねすることなく展開するであろうVシネクスト『仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング』を戦々恐々として楽しみにしていようと思います。