ムソウノカキオキ

管理人の好きなこと(アニメ、特撮、オモチャetc)についてつらつらと語っていくブログです。色々遅いですが、よろしければコメントなどもお気軽にどうぞ

『フェイト/エクストラ シナリオ集』にわ感想 余談~アニメ版とかキャラとか

 

 物語に関する思いは前回の感想文で書き尽くしたので、今回はアニメ版との関係や、気になったキャラクターに関することを語っていきたいと思います。

 

 

・アニメ版『Last encore』との関係について

 世間サマでは色々と言われている『Last encore』ですが、骨子の物語の部分では非常に忠実なアニメ化がされているのだなと感じました。

 『前主人公から立ち位置を引き継いだ主人公が、敗者たちの思いを背負い、戦いの中で成長し、アイデンティティーを確立していく』という芯の部分はしっかり共通しています。

 岸浪白野から岸波ハクノという新しい主人公になるにあたって、この部分は良く練られているなと感じました。

 ただまぁ、主人公交代とかの語り口がそもそもアクロバティックだというだけで(笑)

 

・シナリオ集

 個人的には初めて読むゲームのシナリオ集。

 自分のような本の虫にとっては、文章パートにガッツリ没入するのにあたりゲームから紙媒体になってくれたのはとても嬉しい。ゲームの方は初期投資もかかりますしね。

 ただ、本筋となるストーリー部分の文章を主に書籍化されたものなので、お遊びの部分(モブキャラクターのセリフなど)はかなりオミットされているようです。(ある程度はフォローされているとはいえ)ギャグができそうな藤村先生なんて予選とオマケの『エクス虎ミッション』くらいしか出番無し。そうしたこともあって、作品のトーンはかなりシリアス度高めに感じました。

 また、単にシナリオを書籍化しただけでなく、どういう構成にしたらドラマチックになるのかというのは配慮されていたように感じました。たとえば、『正解』の選択肢を選んだ時の文章を一番最後に持ってくるとか。

 ただ、文章の意味が変わっちゃうレベルの誤字が所々に見られるというのは(苦笑)

 

・西欧財閥

 本作で最高に皮肉の効いた設定だと思うのがこちら。

 『平等な富の分配』という一昔前の社会主義国家のような方針を取っているのが、それと対局をなす資本主義の権化のような『財閥』であるというアイロニー。(僕個人としては、社会主義も資本主義も否定するつもりはありませんが。)

 

遠坂凛

 命のやり取りに慣れていて、ともすればドライに見えるのに、その実面倒見の良いお姉さん気質という不思議なキャラクター。

 誤解を恐れずに言うなら、『fate/stay night』の同名キャラと言うフィルターが無ければ取っ付きづらいと感じた人もいたんじゃないかな?

 物語を読み込んで行くにつれ、ドライな戦場思考は現実を生きる/変えるためのバイタリティから身につけたものであり、過酷な状況でも他者を顧みるエネルギーの持ち主であることが分かっていきました。

 個人的に刺さったのは、なんだかんだで子供好きであると言う話。我の強いようでいて、誰かのためにトコトン手を尽くすことのできる女性なんですよね。

 

ラニ=Ⅷ

 個人的に驚いたのは、彼女が担っていたストーリーが、心を知らなかった少女がコミュニケーションの中で豊かな感情を身につけていく……という王道の綾波系だったこと。

 アニメ版『Last encore』の”クールに見えて情が深い”と言うキャラ立ちとはやや違った印象でした。

 おそらく、今回の物語で中身を得た彼女がアニメのような女性に成長していくのだろうなと感じさせる所。

 個人的に刺さったのは、凛ルート/ラニルート共通で、最終決戦の折に白野が彼女に思いを馳せるシーン。どちらのヒロインを助ける選択をしたとしても、ラニの存在が白野の中で大きかったことを感じさせる場面です。

 

・レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ

 物語最大のライバルであり、シナリオ時点ではヒロイン(?)候補だったという驚愕の人物。

 『ヒロイン分岐:レオ』の文字に不覚にも笑ってしまったのは僕だけでは無いでしょう。

 キャラとして見た場合、生まれたときから絶対的な王として育てられたためか『相手に理解してもらう』という物言いをしても、『相手のことを理解しよう、意見を聞き入れよう』という姿勢がナチュラルに欠落しているのが恐ろしいポイントでした。相手への問いかけとか、相手への一定の理解を示すこともあるんですけど、あくまで自分のモノサシでしか見ていない、と言う印象が強かったです。

 ただし、それはあくまでハーウェイ家の英才(?)教育の結果であり、彼個人の感情の発露ではない。むしろ、この物語においてレオが感情的になる場面の方が少ない。彼の名がダ・ヴィンチちゃん=感情を表現するのが生業の芸術家と同名というのはなんとも皮肉。(同じことはユリウス=皇帝カエサルと同名であることと同様)

 そんな彼でも、制作サイドからは、敗北を知り成長したレオならヒロイン=白野から未来を託されるにふさわしい存在だと思われていたのが感慨深いところ。

 

・トワイス・H・ピースマン

 本作のラスボス。

 ”正規の”聖杯戦争としてはレオがラストなので裏ボスと呼んだ方がニュアンスは近いかでしょうか?

 戦いの中で成長していった白野の最後の相手としてはふさわしいバックボーンを背負ったキャラクターでしたが、物語のラスボスとしては致命的に出番が少ないのが難点。

 アニメ化にあたり、第1話から出番をねじ込みたくなるのも分かるなぁ(笑)

 

・マスターとサーヴァントの関係

 様々なマスターとサーヴァントが登場した本作ですが、サーヴァントの立場は一貫してマスターに寄り添う者として描かれたのが印象的でした。まぁ、例外が無いでは無いですが、サーヴァントの裏切りが一切描かれないというのは本作の特徴なのではと思います。

 サーヴァント側の叶えたい願いの有無がフィーチャーされなかったのもその理由の一つかもしれません。(月の聖杯戦争のシステム的に、サーヴァントの願いは叶えられないのかも?)

 互いに異なる願いを持つマスターとサーヴァントの緊張感のある関係を楽しみたい層には物足りないかもですが、その代わりに白野を助け、導くセイバー=ネロたち3人のサーヴァントのカッコよさが光る構成だと思いました。
 アニメ版でも寄り添う者としての立場はどのサーヴァントもブレ無かったのが素晴らしい。
 しかし、どのサーヴァントもマスターには優しい分、敵サーヴァントには容赦ないもので、決闘前のサーヴァント同士の挑発合戦には毎回ハラハラしたものです。
 この辺は、アニメ化にあたって大人しくなりホッとしたところでしょうか(笑)。  とはいえ、アニメ版では、最後のサーヴァントとネロとの間にどのような応酬が繰り広げられるか楽しみなところでもあります。