今回は『ウルトラマンブレーザー』の感想をば。
放送前から、「これまでの『ウルトラマン』とは一味違うぞ!」と熱心に宣伝を打たれていた新作。
視聴者の間で期待がブチ上がる中、そのハードルを見事に超えて見せた第1話だったのでは無いでしょうか。
これまでの作品を観たことが無い人、『シン・ウルトラマン』くらいしか知らないよと言う人にもオススメかと。
今回はエピソードゼロ的な回と、アナウンスされていただけあり、歴代でもかなり変則的でしたね。
『ウルトラマン』シリーズと言えば、なんやかんやあってもラストにウルトラマンが出て来て怪獣を倒し、レギュラーキャストは次回も無事生存、と言うのが当然ながらお約束。
ところが今回はウルトラマン登場前、主人公のヒルマ=ゲント以外はゲスト隊員メインと言う異色な顔ぶれ。
彼らが一体どうなるのか視聴者目線でも分からないと言うことで、ピリっとした緊張感を登場人物と共有する、珍しい第1話でした。
そんな主人公ヒルマ=ゲント。
隊長らしい威厳と適度な若々しさを醸し出し、チームの内外とも気さくにコミュニケーションを取れる親しみやすい主人公。
何より、作戦目標に「全員無事に帰還すること」を掲げる人命重視の姿勢はまさにヒーロー。
その魅力は演じる蕨野友也さんの力も大きいようにも見えます。
人命重視の姿勢は、三年前の武勇伝出来事が『ゲント隊長がかなりの人数を救助した』ことからも伺えます。
このエピソードが、ゲント隊長のヒーロー性を強調する役割にありつつも、彼のヒーロー性を『怪獣をやっつける事』自体に置いていないことに注目したいところ。
たとえば、華麗な指揮でたくさんの怪獣をやっつけた強い隊長、とかでは無いんですよね。
思えば、近年のウルトラシリーズは怪獣を倒すことの先にあるものを重視してきたように思えます。
自分たちの未来を切り開くデッカー、笑顔を守るために戦うトリガー。
怪獣を倒すことは、その先に至るためのプロセスの一つに過ぎないと言っても良いでしょう。
ゲント隊長は、第1話時点にして怪獣退治と言う手段で人命を守る、と言う目的意識を強く持っていることが伺えます。
そんなゲントたち地球防衛隊が活躍するのが、夜の池袋。
怪獣出現により、商店にはシャッターが降りているなど、日常が非日常へと変わっていることが感じられる映像が多かったのが印象的です。
小さなお子さんにとっては、こんなに遅い時間のビル街を訪れることは滅多に無いでしょうから、より新鮮な光景だったのでは無いでしょうか。
今回の裏主役と呼べるのが宇宙甲殻怪獣バザンガ。
事前のビジュアルでは瞳が見えて可愛らしささえありましたが、映像上では目が爛々と輝く、まさに人類にとっての脅威。
セット内だけでなく、実景との合成シーンもたっぷりで、現実の池袋に怪獣が出現していると言う説得力が感じられます。
思えば、実景合成と言った要素は『ULTTRASEVEN X』あたりの頃から試みられていた方法。ヒーローの初戦が夜、と言うのも縁が感じられます。
それから15,6年ほど経った現在に、その時の手法がさらに迫力ある形で用いられているのは技術の進歩を感じます。
バザンガが迫る大ピンチに、ゲント隊長の腕に出現するブレーザーブレス。
よもやここまで何のほのめかしも無く、いきなり登場するとは思いませんでした。
そして有無を言わせずブレスを隊長に操作させて、現れたウルトラマンブレーザー。
光の中から堂々と見栄を切るでもなく即座に行動する初登場は、どこか愛嬌さえあり。
しかしながら、その内容は倒壊するマンションから隊員たちを守ること。
その後の戦闘も一貫して隊員を守ることに傾注した動きをしており、この謎めいた巨人が地球人の味方であることが伝わってきます。
こうして一たびの危機を脱したゲント隊長。しかし、全ては謎だらけ。
さらには、新しい部隊の隊長と言う仕事も任されるようで……?
怪獣をどうやって倒すか、と言うことにウェイトを置いたサスペンスフルな第1話でしたね。
人間が怪獣をどう倒すか、と言う物語づくりは『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』にも近く、これらの作品が好きな方にもオススメかと。
田口清隆監督らしい、リアリティにこだわった映像は、まるで我々の住む日本に怪獣が出現したかのような臨場感がありました。
そんな中で、主人公のゲント隊長がどのような人物なのか、と言うことが過不足なく描写されていたのも素晴らしく、脚本・演出がしっかり練られているのが感じられます。
作戦内容などの詳細は掴めなくても、お話を楽しむのはそこまで難しくないんですよね。
そんなゲント隊長が、ウルトラマンブレーザー、そして新部隊『SKaRD』の隊長としてどう奮闘していくのか、期待です。