ムソウノカキオキ

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仮面ライダーセイバー、全体感想。

 先日、特撮ヒーロー番組『仮面ライダーセイバー』が最終回を迎えました。

 作品内外でいろいろとありましたが、最後は見事な大団円を迎えてなによりです。

 そこで今回は全体を通した感想を書いて行こうと思います。

 

 

  ・『仮面ライダー』、その王道中の王道。

 作品を通して視て、『仮面ライダー』入門編として最適な作品の一つになるだろうと感じました。

 ヒーローが複数登場して、戦い合ったり、協力したり、1話完結じゃなかったり……と、所謂『仮面ライダーらしさ』と言うものをここまで満遍なく、分かりやすく網羅している作品も珍しい。

 そもそも、『仮面ライダー』は、兄弟番組の『スーパー戦隊シリーズ』よりも王道から外れた感じの作品が多いんですよね。

 だから、王道のヒーローもの、王道の『仮面ライダー』を真正面から描こうとしてくれた『仮面ライダーセイバー』は逆に新鮮に感じました。

 

・バタバタした、ドラマ。

 一方で、毎回毎回「バタバタしている」という感覚があったのも、『セイバー』の特徴。  イベントの多い第1クールが顕著でしたけれど、その後も年間通してドラマがバタバタしていた感覚がありました。

 『セイバー』は毎回1.戦う(各種アイテムの販促)、2.キャラクター達を目立たせる、3.縦軸のお話を動かす、と言う要素が30分の間にパンパンに詰め込まれているんですよね。  ただでさえライダーの新フォームやアイテムを販促しなくてはいけないのに、仮面ライダーに変身するキャラクター達に台詞を用意してあげなくてはならない。

 さらに、視聴者に次回も観てもらうために、もとい大河ドラマ形式を採用しているため、縦軸の物語を(大なり小なり)動かすイベントを描写しなくてはならない。

 これら3つのタスクがあるため、登場人物1人1人の掘り下げと言ったドラマパートは相対的に後回しになる。

 その結果、毎回決してスムーズとは言えないペースでドラマが進行する=バタバタしていると言う感覚になったのだと思います。

 TELASAで配信された『剣士列伝』が制作されたのも、キャラクター1人1人を描ききることが難しいと言う制作サイドの判断があったのではないかと邪推しています。

 大河ドラマ形式且つ、多くの仮面ライダーが登場する作品と言うと『仮面ライダー鎧武』(2013年)が思い出されますが、そちらも『ドラマが盛り上がった次の回に番外編』など、決してスムーズとは言い難かったですしね。メインライターさんがインタビューでその悪戦苦闘ぶりを語るくらいに。

 その上、10人近い仮面ライダーが同じ陣営で、且つ同程度に見せ場が用意されると言うことも今までに無かったこと。

 先に挙げた『鎧武』でも、途中退場するライダーがいたり、ライダーの陣営が分かれていたり、何人かのライダーには全く出番の無い時期があったりと言ったことが見られました。

 それに対して、『セイバー』では、一時退場した仮面ライダーエスパーダやカリバーを数少ない例外として、多くの登場人物は初登場から最終回までコンスタントに出番がありました。

 これはつまり、描写しなくてはならない要素(登場人物)が例年より多いと言うことです。

 それが「バタバタしている」と言う感覚の原因の一つなのでしょう。

 正直、大河ドラマ形式且つ複数人ライダーと言うスタイルでドラマを作るのは最早限界に近いんじゃないかと感じます。

 一方で、それだけ登場人物に出番を与えた分、それぞれの登場人物が印象に残ったのも確か。

 アジトに籠っていることの多いメギド3幹部、長らく敵として活躍した神代兄妹と言ったキャラクターもちゃんと印象に残っているのはすごいことだと思います。

 

・過密スケジュールに、ビビる。

 「バタバタ」感をもう少しだけ掘り下げると、画面を通して制作サイドの厳しさと思しきものが読み取れたことも多々ありました。

 第12話、第13話と連続して富加宮賢人死亡回(いや、実際は両方とも一命を取り留めていたのですが)が放送された時には、「オイオイ、脚本家間の連携大丈夫か?」と思いました。

 第38話では、8大ライダーと仮面ライダーソロモンの決戦、賢人の説得、セイバーとバハトの決戦、と言う1つ1つだけでも1話作れそうな要素が詰め込まれていて、クロスセイバー登場に、「ああ、このためにこれらの要素を全部昇華しとかないといけなかったのか」と戦慄。

 さらには仮面ライダーソロモンとカリバー ジャオウドラゴンの頭部形状が共通と言う情報を知ってから観直すと、ジャオウが出なくなった丁度次の回あたりからソロモンが登場している。

 色々と断言はできませんが、画面に観えない方々もスケジュールがギチギチすぎる可能性が浮上。

 こうした厳しい舞台裏が見えたように感じられたことも印象に残っています。

 僕もそうしたことの分かるだけ大人になったと言うことでしょうか。……いやだなぁ(苦笑)

 ご時世的なアレコレもあるのでしょうけれども、多人数ライダーとはかなり無茶な企画なのだなと感じました。

 

  ・アクションシーンの、すごさ。

 とはいえ、毎回目の覚めるようなアクションに魅了された時の方が多かったことも確か。  第1クールのバンク風変身シーンは王道ファンタジーらしいケレン味にあふれていました。(なぜバンク”風”なのかと言えば、主人公の服装は毎回変わるので全然全く使いまわしていないから)

 その後はいつも通り?の合成が増えたものの、ケレン味はむしろ増加。

 視聴者が分かるところでも分からないところでも数多くの挑戦が感じられました。

 アクション演出とは少しズレるかもしれませんが、第3クールで「変身」の発声を省略しての変身シーンが見られたのは、結構すごいことなんじゃないかと思いました。

 数多くの様式美の見直しが見られた『仮面ライダー』シリーズにあって、「変身と叫んで姿を変える」と言う描写は毎回共通しています。(「発声が必要ありません」という設定の『仮面ライダー響鬼』(2006年)あたりを一部例外として)

 そんななか、「変身と言います、でも言わない回もあります」と言うのはかなりの冒険だったのではないでしょうか。

 

・編まれた設定、納得のラスト。

 さんざんバタバタしていると言いましたが、一方で王道ファンタジーとしての説得力を持たせる設定は作り込まれていると感じました。

 時折、公式サイトでもしっかりとした裏設定が出るくらいですし。

 また、ネット上の視聴者の意見を見ると上条大地の思わせぶりな台詞が全て後から納得できるものだったと言う意見も多々見られました。

 これも、上条の行動理由などをきちんと作り込んでいたからこそなのでしょう(あるいはストーリーをきちんと合わせた?)

 主人公が小説家と言う設定も、そんなに頻繁には出てこなかった感はありますが(まぁ毎回戦ってますからね)、物語の結末は小説家だからこそと思わされるラストでした。

 諸々の事情に縛られない、それこそ小説版ができたら大変に読みごたえのあるものになるのではないでしょうか。『小説 仮面ライダーセイバー』、今から楽しみです。

 

 総じて、あれこれ目に着く所もあったものの、時に笑い、時に手に汗握った1年でした。

 次週からは『仮面ライダーバイス』へとバトンタッチ。

 ご時世的なアレコレ、大人の事情的なコレソレとの戦いはまだまだ続きそうですが、悪魔的に面白い作品となることを期待しています。