ムソウノカキオキ

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『ゴジラマイナスワン』簡単感想

 『シン・ゴジラ』に続いて久々の国産ゴジラ映画、堂々登場!
 実のところ、怪獣プロレスを”しない”怪獣映画にはあまり馴染みが無いので、ちょっと躊躇していたところはありましたが、勇気を出して観に行けば、ハラハラドキドキの2時間を楽しめました!

(以下、ネタバレ注意)

 

 正直、舞台は戦中戦後と言うことで、身構えていた部分はありました。
 ゴジラを通して戦争の悲惨さを伝えよう!みたいな『教育的な』ノリになりはしないか、と。
 ふたを開けて見れば、思いのほか、戦争の取り扱いはカジュアルだったな、と言う印象を受けました。
 戦争を生き延びて『しまった』と自認する男たちが、当時の経験を活かしたりしなかったりして最終ミッションに臨むのがカッコイイ!と言う筋立ては、危なっかしさを感じなくもありませんが。

 とはいえ、こうした描写が不謹慎なもの、生々しいものと受け取られないのは、それが現代と言う時代なんだなぁとしみじみと思います。
 作中、銀座が「皆さんの思い出と共に~」と言うセリフと共に蹂躙されますけれど、実際にあの頃の銀座を歩いた観客は、劇場にはほとんどいなかったのではないでしょうか?

 近年、戦争体験者の方々が天寿を全うされている、と言ったことも報道されていますが、こうして第二次大戦が少しずつ『見知った祖父母の世代の過去』から『顔も知らぬ誰かの歴史』へと緩やかに移行していくのだな、と。

 とはいえ、エンタメとしては戦争の扱いはこれくらいで良い、と言うのが自分の本音です。
 そもそも、怪獣映画自体が実在の建物を壊すと言う、一定の不謹慎さとワンセットですからね(笑)
 
 そんななか、ピリっと引き締めてくれるのが、主人公・敷島浩一を演じる神木隆之介さんの演技。
 戦争が終わってなお戦争に囚われる、心に傷を負った男の表情を切々と見せてくれて、これだけでおのれ戦争!おのれゴジラ!、と思わせてくれます。

 この敷島さん、ゴジラに遭遇してなお軽傷と言うのはなかなかのツッコミ所ではあるんですが、それで彼は一切幸福になっていないので、ドラマ進行に影響がない、と言うのは鬼のような進行でした。

 本作には良い役者さんばかりが揃っていますが、やはり神木さんの繊細な演技が、戦後を取り扱う本作をシリアスに引き締めてくれていました。

 本作のゴジラは、その出生が全くと言って良いほど語られておらず*1、人の命を奪う脅威として一貫して猛威を振るっていました。

 一番の特徴は、明確に人間を狙っていること。
 冒頭の小型サイズで次々と人間を殺害するのを皮切りに、ジョーズの如く主人公たちを追い回すなど、本作のゴジラは明確に『破壊』ではなく『殺人』を目的に動いている生物として印象付けられています。
 ここまで明確かつ執拗に人間を狙う巨大怪獣と言うのも逆に珍しいのでは無いでしょうか。
 それだけに、作中人物がゴジラを倒さないと!となるのもすんなり理解できました。

 正直、巨大怪獣が普通のお船や飛行機でどうにかなるわけないだろー!と思わなくも無いですが、そこは『シン・ゴジラ』で通った道。『長門』や『震電』がミリタリー的な見せ場なのは分かるのですが、SFガジェットも欲しかったかも……。

 しかしながら、対ゴジラの『ワダツミ作戦』は、メタな視点からおお!と思わせていただきました。
 なにしろ、この作戦の映画的な醍醐味は、ゴジラ海上に姿を見せるあのシーンを作品のクライマックスに持っていくところ!
 数多の作品で描かれた、水しぶきを上げて怪獣が海から現れる!と言う大迫力のシーンを一番の盛り上がりにしよう、と言う発想には頭が下がります。
 思えば、仮面ライダーの変身然り、日本のヒーローは登場シーンが一番の盛り上がりどころになるもの。
 それを敢えて、観客も登場人物も望むシーンにする、と言うのは、言われてみれば道理であります。(艇長の「上がってこい!」と言う台詞がいかにもわかりやすい!)

 そんなこんなで(結構しっかり吹き飛んでいたハズの)典子さんと敷島の再会で、ひとまずは安堵。
 しかし、冷静に考えると、これからが大変なのでは、とも。
 典子さんの黒いアザ、そして敷島自身も黒い雨をモロに浴びている。
 そして、当然の如く再生が暗示されるゴジラ
 前向きとも、不穏とも取れるラスト……

 色んな意味で時代の変化を感じつつも、見事な合成から生まれる迫力の映像、何より怖いゴジラに、始終ハラハラドキドキな作品でした。
 それに、神木さんの名演が兎角印象的。
 次は、怪獣プロレスものも観て見たいですね。

*1:クロスロード作戦が原因?と言うのも暗示させるに留まってますし