『地球を抱くものたち』
堂々完結!
ヴァラロンが猛威を振るう地球へとどうにか帰還したSKaRDとブレーザー。
倒れたブレーザーに「俺たちスカードで行く」と語るゲント隊長。
いつになく悲壮な表情で、向けた背中さえ寂し気に見えます。
言葉にこそしないものの、死を覚悟した男たちのやり取り。
前回に引き続き、死の距離感が驚くほど近い。
これが最期になるかもしれない、と言うことが当たり前の共通認識になっている。
だからこそ、「俺も行く」と体を起こすブレーザーさんに心を打たれます。
このシーン、ブレーザーが合成でなくとも、キチンと巨大に見えるのが素晴らしい。
ハルノ元参謀長の助けで意見具申をするエミ。
「失礼します」と迷いなく通信機のスイッチを入れるのがタフ。
ここからの一連の流れは、『アースガロンで切った張ったしつつ、エミたちが集めた情報を元に逆転』と言うSKaRDの定番スタイルの延長線上にあるのも素晴らしいですね。伏線、では無いですけれど、定番のパターンが見事に結実している。
エミの口から語られるV99の真実。ファーストコンタクトの失敗だった、と言う真相。
彼らからしてみれば、自らの同胞を撃った上に技術の軍事転用をするような知的生命体は危険以外の何物でもないですよね。
送り込んできた怪獣はどいつもこいつもえげつなかったですが、それも恐怖心のなせる業か。
エミの説明に、驚き役客観的に状況を理解するテルアキ、技術者としての視点で納得するヤスノブ、意志疎通の可能性に思い至るアンリ、とこれまでの積み重ねとキャラクター性が活きています。
一連のやり取りを聞いていなかったブレーザーとゲント隊長は最初こそ普通に戦おうとしていたものの、程なく意図を察するのが互いの信頼関係が感じられます。
ドバシ・ユウ。よもや最終回になってこんなにも味わいのあるキャラクターになるとは思いませんでした。
悪い人、なのではなく間違ってしまった人。
それでも、地球に対する脅威となってしまったV99に対して彼なりに対応しようとしていた、と。
思えば、日々トレーニングに励んでいたのも、いつ現職復帰しても良いように、と言う思いからだったのかもしれません。
あるいは、宇宙戦争を起こしてしまった男という汚名を背負う覚悟さえ決めていたのかも。
自らが始まりとなってしまった、”脅威”に対して、自分が行く!行かねば!……となった結果が、前回からの指揮所登場、と思うと少し物寂しさもあります。
最終的に、後進の判断を尊重し、今度こそ防衛隊から退くことができたドバシさん。
そんな彼は、仲間と出会わなかったゲント隊長のイフの姿だったのかもしれません。
そんな彼に、やるべきことをやったとまっすぐに説得するエミ。
ドバシから直接的、間接的に傷つけられたと言っても良いはずの彼女。
ドバシに対しては恨み言を言っても良いような立場でありながら、彼の心に寄り添った言葉を投げかけられるのは何という心の強さ!!
エミは罪を憎んで人を憎まず、と言うスタンスは思えば初主役回の第4話『エミ、かく戦えり』から一貫してるんですよね。
エミの説得もあり、防衛隊は武器を下ろし、V99の怪獣船団は去って行く。
この辺りは綺麗すぎる感もあるかもしれませんけれど、これは必要な綺麗ごとなのだと思います。
それに、船団を前に武器を下ろした防衛隊支部ひとつひとつに、あの瞬間ドラマがあったのかもしれません。
V99が去った今、大暴れするのみ!
ヴァラロンの生体爆弾を食らう怪獣たち。
彼らもまた地球と言う自らの住処を守るために奮闘。
時に人間と戦うこともあれど、怪獣もまた『地球を抱くものたち』の一員。
それにしても、月面であれだけ猛威を振るったヴァラロンの生体爆弾がこんな形で無力化されるとは。
やはり青い星、危険!?(オイオイ)
勝負を決したのは、遂に放たれたブレーザー光線。
ジュンくんの腕輪とサトコさんとの結婚指輪から伝わる、熱く激しい想いがブレーザーブレスを通してゲントさんの力に!
まるで花火のような演出から、痛いくらいに激しいエネルギーなのがバチバチに伝わってきます。
そんな激しすぎる奔流を放つための姿勢が結果として馴染みのある構えになるのが素晴らしい。
こうして、ボロボロになりながらもまたひとつ危機を乗り越えたSKaRD。
それにしてもアーくん、自我を持った上に自律可動までして、そのうちパイロットが必要なくなるのでは……?
ブレーザーの故郷はV99の向かうゴールなのではないか、と言うゲント隊長の推察が物語に良い余韻を与えます。
最後の最後に、帰宅するゲント隊長、いえヒルマ・ゲントさんの姿にバッチリ尺を取ってくれるのが素晴らしい。
物語と言う物は、最後は主人公が日常へと帰ってきて欲しいものですから。
ジュンくんとほほ笑むゲント隊長の姿は、彼がパパ・ヒーローであることを強く思わせてくれるラストカットでした。
そんなわけで見事完結した『ウルトラマンブレーザー』。
第1話のかつてないワクワク感から始まり、そのワクワクが裏切られる事無く、最終回を迎えることができました。
どこを切っても語り尽くせない細かなこだわりも素晴らしい。
軍隊的な用語や所作、隊員たちの細かな仕草、それに服装、などなど。
自分がこの感想ブログを拙いながらもなんとか完走できたのも、面白さとこだわりの素晴らしさがあってこそ。
そして迎えた最終回は、これまで積み重ねてきた作品の特徴と伏線が収束する実に満足なフィナーレ!
……と思うと同時に第2シーズンが観たい!と思った『ウルトラマンシリーズ』は初めてかもしれません。
ゲントとブレーザーの関係性やSKaRDの面々の姿、それに個性豊かな怪獣たちの姿をもっと観たい!
こんなことを素直に思えるほどに、自分は彼らのことがいつしか好きになっていたのです。
そう視聴者に思わせたのは制作陣の「勝ち」であり、そんな作品を得ることができた自分にとっても「勝ち」なのだ、と感じ入ります。
このまま劇場版まで、良い熱気を保っていられそうです。
嗚呼、本当に良い時間だった!