大怪獣首都激突!ド直球に怪獣の魅力を押し出したタイトルが実に本作らしい!
いやぁ、ブレーザーさんってヒーローじゃなくて怪獣(良いモノ)だったんですねえ。(やっぱり)
(以下、ネタバレ注意!)
アバンは『これまでのあらすじ』ではあるものの、もともとが見ごたえのある映像だったので、満足度は高め。
特に、第1話のド迫力なバザンガ戦を短い時間ながらスクリーンで観れたのは得難い体験でした。
そんなわけで、実際のドラマは上映時間に比して短め。だいたい1時間くらい?本作が初めての映画鑑賞となるお子さんがいることを考えると妥当なところ。
なので、ドラマ部分はギュッと焦点を絞って、一組の親子を助けよう!と言うお話に。
一人の少年の孤独な心に呼ばれ、魂を求める新怪獣ゴンギルガン。
少年の心の化身にも近しい怪獣を鎮め、少年を救うストーリーラインは、まさに王道。
オタク的には『SSSS.Gridman』的だとも感じたり。どこか『シン・ウルトラマン』へのオマージュが感じられる本作だけに、そうした部分もあるのかも?とも思ったり。
ゴンギルガンは角度によっては瞳が大きく見えて可愛らしくも見えるのは意外でした。
誕生経緯を考えると、少年の心の化身、生まれたての怪獣、と言った要素も外見から感じられて、発見があります。
それを思うと、ゴンギルガンはちょっぴり可哀想な怪獣でもありました。
とはいえ、いわばゾンビのような存在なわけで、「地獄に帰る」必要があった、とも言えます。
マブセ親子は、もしかしたらヒルマ親子もそうなっていたかもしれない、と言う鏡合わせの存在にも見えました。
互いに愛情はしっかりあるのに、ボタンの掛け違えから良くない方向に向かってしまう。
マブセ社長とゲント隊長の会話は、同じ父親同士ならではでしたね。
ヒルマ家も何もかもが上手く行っているわけでは無く、ゲントさんが仕事と家庭の板挟みに逢うシーンが事件と並行して描かれています。
それでも、ジュンくんに一言言い添えたり、と言ったささやかな積み重ねの違いが感じられます。
「いきなり50メートルになるなんて思わないじゃ無いですか!?」と言うセリフは、子供の成長に戸惑うさまが端的に現れていますね。
劇場版『ウルトラマンX』でウルトラマンティガが登場したシーンを思い出させる台詞でもありますが、そちらとはまさに対照的。
今回は、ちょっとした謎解きの要素も。
意図的に分かりやすく作ってあり、映画を楽しむ良きスパイスになっています。
ユウキ君の初登場シーンで優秀さを強調し、ダムノー星人のふるまいで適度な違和感を持たせつつ、「地球の技術を使いこなす宇宙人」と言ったヒントをまいての正体バレまでの流れが鮮やか。
ヒルマ家サイドのオチも、終わってみればなるほど!と納得
短い映画だからこそ、謎解きの楽しさが効いてきます。
マブセ・ユウキくんは今回の影の主役でしたね。
暴走する思い。
12歳にして拗らせに拗らせた中二病。
いかにもそれらしいオトナ批判をかましながら、「それってどこかで聞いた風な言葉だよね?」と言う所までがワンセット。
段々と大人ぶったメッキが剥げて来て、「やだやだやだやだ!」「嫌いだ、嫌いだ!大人なんて嫌いだ!」と言う本音が見えてくるところまで、印象的なキャラクターでした。
そんなユウキくんの思いを”子供”の立場から寄り添い、解体してくれたのがエミ隊員。
エミさんはいかにも仕事のできる大人の女性……と言う風にも見えるのですけれど、時にこうした”娘”としての顔を覗かせてくれるのが素敵。
ユウキくんとお父さんの和解を最後まで見守っていたのも、彼女の優しさが感じられます。
あと、今回人死にをにおわせる描写が、TVよりも多かったですよね。タガヌラーにやられる一般隊員や、産業スパイの最期とか。
とはいえ作品世界としては、これくらい死の臭いの近しい雰囲気はあるのですけれど。
やっぱり、最近のドアサだと(自主?)規制が多いのかしら。
特撮のシーンは大画面に相応しい大迫力!
アバンからブレーザーとアースガロンの大暴れ。
よもや、国会議事堂がああも念入りに破壊されるとは思いませんでした。議事堂の被害が一顧だにされていないのもクスリ。
ブレーザーには3分のリミットが無い分、アースガロンに回ってくるのが面白い。
ボロボロになりながらも持てる力の全てを尽くすSKaRDと、超然とした(しかし完ぺきではない)ブレーザーとの対比がアツいですよね。
そして迎えるエピローグは、ヒルマ家に迎えられたSKaRDの焼肉。
ゲントの宝物が一堂に会することに。
同僚を家によぶなんて、ゲントさんの初期の頃の距離感では考えられないこと。
チームの絆が強くなっていったんだな、と改めてほっこり。
『ウルトラマンブレーザー』は、この素晴らしいチームが出来ていくまでの過程を描いた物語だったのだな、と改めて感じました。もちろん、ブレーザーとアーくんも含めて。
特典の音声ドラマもですけど、この面々が他愛も無いやり取りをしてるだけでもうれしくなるところまで来るとは思いませんでしたね。
最後に、『ウルトラマンブレーザー』と言う作品全体について言い添えると……最高でした!
野性味のあるウルトラマンやハードSF的なテイストを感じさせる新機軸を持ったドラマ。
一方で、ウルトラマンシリーズそのものの魅力である怪獣や防衛隊の掘り下げに真摯に取り組む姿勢はむしろ王道。
愛嬌と恐ろしさを兼ね備えた怪獣の魅力、段階的に作り上げられていくチームの関係性のグッと心を掴まれました。
1話完結を基本とするスタイルは、当時のニチアサが連続性重視だったのに対し、結果として見事な差別化になったと言えるでしょう。
こうした点が自分の中にバッチリとヒットしました。
ひょっとしたら、この先数年は自分の中で『ブレーザー』を超える『ウルトラマン』には出会えないかもしれないな、と言うなんとも贅沢な悩みを抱えることができました。
それくらい、『ウルトラマンブレーザー』と言う作品は自分の中で特別なものになってくれました。
新機軸の元に王道をこれでもかとばかりに掘り下げた『ブレーザー』。
それは同時に、『ウルトラマンシリーズ』には、どんなことだってやれると言う可能性の光を示してくれたようにも感じます。
これから、どんな『ウルトラマン』が私達の前に現れてくれるのか。
実に楽しみです。