前回に引き続き、劇場版『呪術廻戦0』の感想をば。
『作品の肝となる(と思った部分)』編です。
コアなファンの皆様に比べるとド素人すぎて恥ずかしいことしか書いていない気もしますが(笑)、ちょっとしたお楽しみになれば幸いです。
(以下、ネタバレ注意)
この作品で印象的だったのは、アクションメインのジャンプ漫画ながら、ホラー要素がしっかり怖いということ。
『呪霊』のビジュアルや所業はかなりのグロ怖。
Jホラー的な演出にもしっかりリソースが割かれており、そのシーンだけ切り取ればジャパニーズ・ホラー映画として成立するくらい。
正直、駄目な人はまったくダメなんじゃないでしょうか。
そして、そんな敵を呪術でロジカルに倒す……のではなく、腕づくで何とかするという力学が存在するというのがこの作品の妙味。
単独でもホラー漫画のモンスターになれそうな呪霊たちが、十把一絡げに三枚おろし。
実にジャンプ的だ!
ホラーと、『ジャンプ』アクション。
どちらの柱も作品世界にしっかり併存していることがこの作品の個性であるように感じました。
で、その2つの柱を行き来する役が本作の主人公、乙骨憂太。
スタート時点の彼は、悪霊憑きのナイーブな少年。
実にホラー的なキャラクターで、実際そのままホラー映画として展開することもできそうな境遇に置かれていました。
……実際、本作の世界は視点を変えれば呪いによるホラー展開が方々に溢れかえっているでしょうし、呪術師の人たちが対応を間違っていれば里香ちゃんが本物のホラー・モンスターになっていた可能性もありえたのでしょう。
そう、世界観のベース、下地の部分がド直球のジャパニーズホラーであるというのがこの作品の特色。
で、『ジャンプ』アクション的な世界は、ホラー世界に対する反抗・反骨精神として存在しているわけです。
物語序盤に、禅院真希が乙骨を「じゃあ祓え!呪いを祓って祓って祓いまくれ!(中略)呪術高専はそういう場所だ!」と叱咤するシーンがあります。
メタ的にみると乙骨がバトルによって己の道を切り開くジャンプ漫画的世界に足を踏み入れたことを如実にあらわしたシーンであるといえるでしょう。
ホラーな世界に閉じこもっていた乙骨少年は、『ジャンプ』的な世界を知り、努力・友情・勝利の三本柱を通して自己実現を果たす。
それが本作のストーリーライン。
(『ホラー映画』と『ジャンプアニメ』の主人公、相反する2つの属性を演じきった緒方恵美さんに拍手!)
けれども、ホラー的な世界が否定される(できる)わけではなく、むしろホラーがあるからこそ、ジャンプ漫画的な反骨精神が際立っています。
逆もまたしかり。
この、ホラーと『ジャンプ』の綱引きじみた関係が、本作を大いに魅力的にみせていました。